の方がよかった

の方がよかった

エルロンドの会議

「『茶色のラダガストか!』と、サルマンは笑った。かれはもはやその冷笑を隠そうとはしなかった。『鳥使いラダガスト! お人よしラダガスト! 愚者ラダガストか! だが、わしがやらせた役割を果たすだけの知恵はあるようだ。なぜなら、あんたがのこのこやってきたからなあ。あんたをよびだすのがつまりあの使いの目的だったのよ。では、灰色のガンダルフよ、旅の疲れを休めかたがた、ごゆるりと滞在してもらおう。わしはサルマンだ。賢者の中の賢者。指輪作りのサルマン、多彩なるサルマンだ!』

「そこでわしはかれの長衣(ローブ)に目をやり、さっきまでは白く見えたその長衣がまことは、さまざまな色糸で織られ、かれが体を動かす度に、目を迷わすほど色が変わり、きらきら光るのに気づいた。

「『白の方がよかった。』と、わしはいった。

「『白か!』かれは嘲笑った。『最初はそれでもよかろう。白布は染められる。白いページには字が書ける。白い光は砕かれる。』

「『そうなれば、もう白ではない。』と、わしはいった。『そして、正体をみつけようとして本体をこわす者は良知の道からそれたのじゃ。』

「『このわしに向かって、いつもあんたがつきあっておる馬鹿者どもにいうのと同じ口をきかんでくれ。』と、かれはいった。『なにもあんたに教えを垂れてもらうために、来させたのじゃない。あんたに選択の機会を与えるためだ。』

J・R・R・トールキン 瀬田貞二・:田中明子訳『旅の仲間』下1 評論社文庫 p107-