ウルク=ハイ

ウルク=ハイ

「そうよ、おれたちは離れちゃなんねえのよ。」ウグルクが怒った声でいいました。「おれは手前(てめえ)たちみてえな豚野郎は信用してねえぜ。お前たちはそのきたねえ豚小屋から一歩出りゃ、からきし意気地がなくなるのよ。おれたちがいなけりゃ、お前たち、ただ逃げるばっかりだったろうぜ。おれたちは戦闘部隊ウルク=ハイなのよ! おれたちがあの大戦士をやっつけた。捕虜もおれたちがつかまえた。おれたちは白の手なる賢者サルマンさまの手の者よ。白の手さまはな、おれたちに人間の肉を食べさせてくださるのよ。おれたちはアイゼンガルドからやって来た。そしてお前たちをここまで連れてきた。この先はこっちの好きな道を通ってお前たちを連れて帰るのよ。おれはウグルク。ウグルクさまの仰せだぞ。」(訳注 ウルクとは暗黒語で、大きなオークの意)

J・R・R・トールキン 瀬田貞二・田中明子訳『二つの塔』上1 指輪物語5 評論社

 オークたちの間ではどなり合いやいい合いがしきりでした。北方組とアイゼンガルド組との間にまたまた喧嘩がもちあがりそうな形勢でした。ある者はもと来た南の方を指さしていましたし、またある者は東の方を指さしていました。

「いいとも。」と、ウグルクがいいました。「それならやつらのことはおれにまかしな! 殺しちゃいけねえ、前にいった通りよ。だがはるばるおれたちが捕りに行ったものを、手前(てめえ)たい捨てちまいたいというんなら捨てて行きな! そいつはおれが世話するからよ。いつものように戦闘部隊ウルク=ハイに仕事はやらせろ。手前ら、白肌どもが恐ろしいんなら走れ! 走りやがれ! あそこが森だ。」かれはどなりながら前の方を指さしました。「あそこまで行け! あれが手前らの望みの綱だ。さあ、行きやがれ! 早くしろ、さもねえと他の者の見せしめにもう二つ三つ頭を叩き落としてやるからな。」

J・R・R・トールキン 瀬田貞二・田中明子訳『二つの塔』上1 指輪物語5 評論社

「わかってるさ。」ウグルクが怒った声でいいました。「いまいましい馬飼いめらがおれたちのことを嗅ぎつけやがった。だが元はといえばこれはお前(めえ)のせいよ、スナガ。お前とお前の斥候たちの耳をちょん切らなきゃならねえとこよ。だがおれたちは戦闘部隊だ。そのうち馬の肉にたっぷりありつけるぜ。もっとうめえもんにもありつけるかもしんねえ。」

J・R・R・トールキン 瀬田貞二・田中明子訳『二つの塔』上1 指輪物語5 評論社

「お前、いろいろ知ってるようだが、」と、ウグルクはいいました。「知りすぎててためにならねえんじゃないのか。ルグブルズじゃ多分、お前がどうやって、またなんでそんなに知ってるのかと不審に思うだろうぜ。だが、今んところは、アイゼンガルドのウルク=ハイがいつもの通り汚れ仕事は引き受けるぜ。そんな所に阿呆みたいに突っ立ってるな! お前の有象無象どもをとりまとめるがいいや! 他の豚野郎どもは森の方に逃げて行きやがった。お前たちもそうしたほうがよかろうぜ。さもねえと、生きて大河に戻れめえよ。さあ、とっとと行った! こっちはすぐ後を追っかけるぜ。」

J・R・R・トールキン 瀬田貞二・田中明子訳『二つの塔』上1 指輪物語5 評論社

「あんまり長く見物し過ぎたね。」と、メリーがいいました。「ウグルクがいるぞ! 僕は二度とあいつには会いたくないよ。」ホビットたちは踵(くびす)を返して森の暗闇深くどんどんと逃げ出しました。

 こういうわけで彼らはファンゴルンの森のまさにその際(きわ)でウグルクが騎士たちに追い着かれ、追い詰められてとげた最後のあがきを見届けることができませんでした。森の縁でかれはマークの第三軍団軍団長エオメルによってついに仕止められたのでした。エオメルは馬を降り、互いに剣を持ってかれと戦いました。そして目ざとい騎士たちは広い平原を縦横に駆けめぐって、まだ逃げる力の残っている逃走中の何人かのオークたちも追い詰めました。

J・R・R・トールキン 瀬田貞二・田中明子訳『二つの塔』上1 指輪物語5 評論社