エキル エリフ

エキル エリフ

二九六

 さればいまこの書を手にせし汝はわが畢生(ひっせい)の大作を手にせしものなり。滅びの力は望めば汝が手にあり。むなしく浪費するなかれ。当初の目的に反して呪文を用うること汝また悪そのものに食らわれ、自らの手の投じたる炎にて死なん。ぬめ忘するるなかれ、龍の汝に向かいて火を吹く時にのみ、手をふりかざして唱えるべし。

 エキル エリフ

 エカム エリフ

 エリフ エリフ

 ディ マジオ


二九六

 箱には「龍火の作り方と投じ方」という題の小さな革装丁の本が入っている。君は開いて読み始める。幸いなことに君の母国語で書かれている。オークらには読めなかったのだろう――そうでもなければこんな宝がいい加減に放り出されていたはずがない。

 本はファリーゴ・ディ・マジオによって細かい肉筆で書かれている。生涯をかけた仕事の家庭が記されたいる。邪悪な龍と戦うために用いる龍火の呪文の案出だ。読んだところによるとファリーゴは晩年にようやく呪文を完成させたがもはや老いて活用できなかったとある。そこで本を書き上げ、箱に入れてカギをかけ、悪用をおそれて火吹き山の奥深く隠したのである。最後のページにはこう書かれている。

 さればいまこの書を手にせし汝はわが畢生(ひっせい)の大作を手にせしものなり。滅びの力は望めば汝が手にあり。むなしく浪費するなかれ。当初の目的に反して呪文を用うること汝また悪そのものに食らわれ、自らの手の投じたる炎にて死なん。ぬめ忘するるなかれ、龍の汝に向かいて火を吹く時にのみ、手をふりかざして唱えるべし。

 エキル エリフ

 エカム エリフ

 エリフ エリフ

 ディ マジオ

 君はこの文句を小声でゆっくり言ってみる。にわかにページが光り出し、光が消えたと思うとどのページの言葉もすべて消え失せている。君は忘れないようにもう一度呪文を心の中で繰り返して部屋を出る。四二へ進め。

ジャクソン・リビングストン『火吹き山の魔法使い』FF1 社会思想社