コレタス

コレタス

聖人コレタス

たとえほ、カーカバードのもっとも未開の地で、君がおそらく意外な出会いをすると思うのは、盲目の聖人だ。だが、ザメンでは多くの冒険者がこのコレタスの助けをこれまで必要としてきた。彼は大地および治癒の女神であるスロッフに仕えている。そして、タィタンでもいちばん未開の地のいくつかで、女神のために非常に努力し、その結果、病を治す力をあたえられたのだ。

コレタスは杖で地面を叩きながら、カーカバードの危険な地を一歩一歩さまよう。悪の使徒に待ち伏され、すぐにでも殺されるのではないかと思えるが、彼がそれを避けているのは驚くべきことだ。まるで、彼が善良すぎるので、悪の者どもも手を出せないかのようだ。しかし、いつもこうではなかった。コレタスは生まれつき盲目ではなかったのだ。彼は若いころは冒険者で、マンパン砦のなかに悪が生まれ始めたのを目撃した。これはマンパンの大魔王カーカバードじゅうに独裁を押しつける究極の目的に向かって、まず手始めに行なった行為だった。忌まわしい魔術師はオークやゴブリン、それに、呪われた赤目などと協定を結んでおり、その者どもは、近隣諸国に大魔王の強大になりつつある力を誇示すべく、カーカバードのわずかな居住地を襲い始めたのだった。

コレタスは、当時は無知で世間知らずだったが、若さゆえに勇気は満ち溢れており、長く辛い旅をしてマンパン砦の入口に到達した。彼は大魔王の前で剣を立て、その軍に入って戦うと宣言することで、砦に入るのを許された。その後、コレタスはたちまち周囲に慣れていった。やがて、その悪の地で行なわれている生活まがいのことを二か月にわたって調査したのち、彼は計画を実行に移した。彼は大魔王への伝令官を装った。遠い辺境から大魔王の軍勢の指揮官たちが報告してくる知らせを運ぶ男として大魔王に近づくのだ。機会はすぐにやってきた。砦の多くの兵がシンのサマリタンの攻撃を撃退していたときだった。シンのサマリタンは鳥男たちからなる低抗勢力で、ここ数か月、砦に襲来しては飛び去るというゲリラ襲撃をくわえていたのだ。コレタスは、ひざまずいて忌まわしき魔神たちと会話している最中の大魔王の部屋に飛びこみ、大いなる杖を手にしていない魔術師の不意をついた。勇敢なる戦士は突撃し、大魔王の頭に向かって剣を振り、カーカバードにふたたび平和を取り戻す一撃をくわえんとした。

しかし、コレタス大魔王を守護する魔神たちのことを計算に入れていなかった。魔術師と地中の奈落をつないでいた次元の門を通して、魔神たちは黒い火球を送ってきた。それは閃光とともに部屋の中で爆発し、その閃光は大魔王を部屋の隅に飛ばし、コレタスの目をくらませた。戦士は黒焦げになった扉の残骸を押しのけ、部屋からよろめき出て、自分がどこに向かっているのかもわからずにやみくもに逃げた。やがて、気がついてみると、彼はマンパンから下っていく荒れ果てた斜面にいた。コレタスは目も見えぬまま荒れ野をさすらい、ついにエルフの魔女フェネストラがいる寺院を見つけた。彼女の着護のもとで、彼は体力を回復したが、視力は戻ってこなかった。それから少しして、彼はスロッフの信者となり、女神の手で、失った視力の代わりに治癒の力をあたえられた。そしていま、彼はザメンをさまよい、破壊行為や暴力でなく治癒を行ない、スロッフの言葉を説くことで大魔王に低抗している。

ついでながら、魔女フェネストラもひどく変わったキャラクターだ。なぜなら、彼女は黒エルフのなかの裏切り者で、黒エルフたちの悪の道に背を向け、善の勢力に自分の力をあたえているからだ。彼女はバク地方にあるスナタ森の寂しい小屋に住み、そこで高等魔法のより深い神秘を研究し、周囲に目を光らせている。(エルフにとっては)意外なことに、彼女は以前、やはりそこそこ評判の魔術師であった自分の父親と一緒に住んでいた。彼女の父親は、大魔王カーカバードにさらなる恐怖をもたらそうと召喚した残虐な七匹の大蛇の一匹、水の蛇に殺された。そのため、彼女はいま、復讐の計画を練りながら、集められるだげの情報をどんな断片でも集めている。彼女はバク地方北部についてのすばらしい情報源だが、見知らぬ者には用心深く訪間者を招き入れることは滅多にない。彼女と出会うことがあったら、君の誠意を納得させてからでないと、その安全な塑言は求められないだろう。

魔術師たちのたかには力を善の道に使い続けている者がまだまだいるので、悪に対抗する仲間を見つけるのに、もっとも期待できるのは魔術師たちのようだ。カーカバードで君を助けてくれるかもしれないコレタスとフェネストラについてはいまも述べたとおりだ。クールでは、緑のセレイターや派手好みのアグラバート・ペルトファスが呼べば助けに現れるかもしれない。もっとも、彼らを何とか説得したけれぱならないだろうが。そして、アランシアには、君がその意見を必要とするかも知れない老は者人いる。その三人はすべて、かってはアランシアと混沌全体とのあいだに立ちはだかったことがあるが、いまでも高等魔法を使っている者は一人しかいない。

M.ガスコイン編安田均訳『タイタン』社会思想社