サクソン人

サクソン人

マーリンの強力魔術

2

 侵略されるということは、不愉快きわまりない(侵略する方はさぞかしいい気分だろうが)。

 サクソンの侵略となれば、これはもう最悪だ。剣を振りまわし、錨をおろし、大きな船から毛むくじゃらの大男どもが海岸へ上陸してくるのだ。まさか上陸してくるなどと誰も知らぬので、奴らはアバロンの平和な土地をゆうゆうとやってくる。略奪はするわ、村は焼き払うわ……アーサー王と円卓の騎士たちが十分な兵を集めて応戦するまでは、やりたい放題だ。

 サクソンの侵略をくいとめるのも、容易なことじゃない。大きくて凶暴なサクソン人どもは恐ろしい戦士だし、あらゆる戦術を身につけている。何度か侵略されたあと、あまり勇敢でない騎士(たとえばモルドレッド)は、サクソンとの和解まで口にしはじめた。

 モルドレッドの和解案とは、英国の主要で広大な土地を奴らに与えて他の土地には侵攻しないという約束をとりつける、というものだった。

 その案はさほどばかげているとも思えず、実際サクソン侵略の第二波がやってくると、アーサー王も真剣に考えはじめた。彼はサクソンの隊長エントウィッスラに使者を送り、その和解案を提示した。が、エントウィッスラは使者の耳をそぎ落として送り返した。それが和解拒否のしるしであることは、明らかだった――しかも、粗暴なやり方で。

 やむをえず、アーサー王と騎士たちは、ふたたび戦闘準備をはじめた。王にとっての戦闘準備とは、エクスカリバーをもちだすことだった。

 エクスカリバーについて少し説明しておこう。その偉大なる剣は、世にいわれているように、アバロンの玉座を得るためにアーサー王が岩から引き抜いたというあの剣のことではない。あのニセの剣は魔術師マーリンがどこからか買ってきて、彼が魔法をかけそこなって、たまたま岩に埋めこまれてしまったのだ。たしかにアーサーを王座につかせる手助けとはなったが、その剣はふつうの鍛冶屋がごくふつうに作ったものにすぎない。

 本当のエクスカリバーは、魔法の武器だ。刃には強力な呪文が吹きこまれ、象でさえ一刀のもとにまっぷたつにできるというしろものだ。が、アバロンには象がいなかったのでアーサーはそれを自分の敵、アバロンの敵に対して使っていた。そして、あらゆる闘いに負け知らずだったのだ。その剣に魔法の力が秘められていいるという噂はたちまちひろまり、アーサーの敵はまたたくまに減ってしまった。すなわち、戦争もなくなり、エクスカリバーは平和の根源であり象徴となったのだ。

 王がどこでエクスカリバーを手に入れたかは、謎だった。マーリンは自分が作ったのだと主張するが……たしかに魔術師としての才能は秀でてはいるが、彼をよく知る者にいわせると、エクスカリバーには彼の力をもってしてもとうてい作れないほどの魔法がそなわっているとのことだった。

 彼は若き謎の戦士ピップにエクスカリバーのミニチュア版の剣を与えた。これはやや魔法の効力が落ちる。このエクスカリバー・ジュニアと呼ばれる剣を用いれば、敵に与える被害に5点多く被害を与えることができる。ところが本物のエクスカリバーは10点、つまり二倍の効力を発揮する。

 アーサー王がエクスカリバーに関して話すことはなかったが、ギネビア王妃は一度だけ、それが妖精にも似た湖の淑女によって夫に与えられたものだ、ともらしたことがある。

 エクスカリバーは、使わないときはいつも、王権の象徴である宝珠や王杖、ローマのワシの軍旗(アバロンからローマ軍を追放したとき、アーサーの父であるユーサー・ペンドラゴンが奪いとった軍旗)などといっしょに、キャメロット城の財宝室に保管されていた。

 ところがある日、アーサー王は、司祭や側近の騎士を従えて財宝室へとむかった。そして、財宝室に入った王は、エクスカリバーが盗まれているのを発見した。

 さあ、15へ進め。

J・H・ブレナン/真崎義博訳『七つの奇怪群島』二見書房