シャムタンティ門

シャムタンティ門

シャムタンティ門

 用意した物が揃っていることを確認し終えると、君は物見頭にうなずく。頭がもう一度だけ門の上の見張りに眼をやると、見張りは怪しいものはいないと合図してよこす。頭はかんぬきをはずせと命じる。君の前に戸口が開かれ、旅の第一段階であるシャムタンティ山地の麓が初めて見える。

 物見頭は大股に近づいてきて、君の手をがしっと握る。「安全な旅をとは言わん。この旅の行手が安全であろうわけがない。カーカバードは悪魔の棲む危険な国だ。だがそんなことは既に知っていいるな。

 あの道を歩いてカントパーニまで行け。小さな商人町だ――ごろつきや泥棒が大半だが――一時間とかからん。カントパーニからは、ビリタンティを抜けてジャバジ川のほとりのカレーという港町に向かう道が三本ある。カレーから先はバク地方を横切ることになるが、あそこのことは誰もよくは知らん。バク地方の昼と夜は太陽でなく、超自然的な力に左右されるという話だ。カレーから先は監視されることも忘れるな」

 こんな警告を聞かされては心強いとは言い難い。頭は続ける「だが、おまえの修行を見てきて、おまえなら間違いなくやれると思ってる。幸運と任務の成功を祈る。おれも、アナランドの全国民も、おまえの無事を祈ってる。リブラのご加護がともにあり、命ながらえて、我らが王国を押しひしいでいる呪いと不景気を解消してくれることを祈ってるよ」

 君は頭と握手し、好意に対して礼を言うと門に歩み寄る。そして心を強くもって通り抜ける。出立を見送る人びとの顔には、君と君の任務の成功にかけられた期待の大きさがうかがえる。

 君は手を振ると背を向け、山並みと向かい合う。夜明けの空気はきりりと冷え、昇る太陽が山々を天然の彩りで染めていき、行く手にひそむ悪意を覆い隠す。

スティーブ・ジャクソン/浅羽莢子『シャムタンティの丘を越えて』創土社