トラルファマドール

トラルファマドール

 カート・ヴォネガット・ジュニアの小説に登場する地球外惑星。


『タイタンの妖女』のときの設定。

小マゼラン雲にある彼の故郷の惑星の、政府樹立一億周年記念祝典の一行事だった。惑星の名はトラルファマドールと言い、これはサロがかつてラムファードのために翻訳したところによると、”われわれみんな”と”第五四一番”との二つの意味を兼ねている。

カート・ヴォネガット・ジュニア 浅倉久志訳『タイタンの妖女』ハヤカワ文庫

 トラルファマドール星人は、サロの話によると、おたがいどうしを製造しあったという。第一号の機会がいかにして出現したかは、だれもはっきりとは知らない。

 伝説はこう語っている――

 むかしむかし、トラルファマドール星には、機械とはまったくちがった生物が住んでいた。彼らは信頼性がなかった。能率的でもなかった。予測がつかなかった。耐久力もなかった。おまけにこの哀れな生物たちは、存在するものすべてなんらかの目的を持たねばならず、またある種の目的は他の目的よりもっと高尚だという観念にとりつかれていた。

 この生物は、彼らの目的がいったいなんであるかを見出そうとする試みで、ほとんどの時間を費やしていた。そして、これこそは彼らの目的であると思われるものを見出すたびに、その目的のあまりの低級さにすっかり自己嫌悪と羞恥におちいるのが常だった。

 そこで、そんな低級な目的に奉仕するよりはと、生物たちは一つの機械をこしらえ、それに奉仕を代行させることにした。これで、生物たちには、もっと高級な目的に奉仕する暇ができた。しかし、いくら前より高級な目的を見つけても、彼らはその目的の高級さになかなか満足できないのだった。

 そこで、より高級なかずかずの目的に奉仕するよう、かずかずの機械が作られた。

 そして、これらの機械はあらゆることを見事にやってのけたので、とうとう生物たちの最高の目的がなんであるかを見つける仕事を仰せつかることになった。

 機械たちは、生物たちがなにかの目的を持っているとはとうてい考えられないという結論を、ありのままに報告した。

 それを聞いて、生物たちはおたがいの殺し合いをはじめた。彼らは目的のないものをなによりも憎んでいたからである。

 やがて彼らは、自分たちが殺し合いさえもあまり巧くないことに気づいた。そこで、その仕事も機械たちにまかせることにした。そして機械たちは、〈トラルファマドール〉と言うのに要するよりも短い時間で、その仕事をやりおえてしまった。

カート・ヴォネガット・ジュニア 浅倉久志訳『タイタンの妖女』ハヤカワ文庫


『スローターハウス5』

トラルファマドール星に来てから、すでに六地球ヵ月たっていた。すでに見物客には慣れっこになっていた。

 脱出などは問題外。ドームのそとの大気はシアン化合物であり、地球は四四六、一二〇、〇〇〇、〇〇〇、〇〇〇、〇〇〇マイルのかなたなのだ。

カート・ヴォネガット・ジュニア 伊藤典夫訳『スローターハウス5』ハヤカワ文庫

トラルファマドール星の夜は、六十二地球時間ごとに一時間しかないのである。

カート・ヴォネガット・ジュニア 伊藤典夫訳『スローターハウス5』ハヤカワ文庫