トラルファマドール星人

トラルファマドール星人

『タイタンの妖女』のときの設定。

 サロは、小マゼラン雲にある別の島宇宙からやってきた。彼の身長は四フィート半しかなかった。

 サロの皮膚は、地球のミカンのような色艶をしていた。

 サロは三本の細い、鹿に似た脚を持っていた。彼の足は非常におもしろい仕組になっていて、どれもがふくらませることのできる球だった。三つの球をゴムマリの大きさにふくらませることによって、サロは水上を歩いて渡ることができた。それをゴルフ・ボールぐらいに縮めることによって、陸地を高速で跳ねまわることができた。三つの球をすっかりすぼませることによって、彼の足は吸盤となった。サロは壁を伝い歩くこともできるのだ。

 サロには腕がなかった。サロには目が三つあり、その目はいわゆる可視スペクトルだけでなく、赤外線や紫外線やX線まで知覚することができた。サロは単時点的(パンクテュアル)であり、――つまり、一度に一つの瞬間にだけ生きており――過去や未来よりも、スペクトルの両末端のすばらしい色彩を見るほうが好きだと、よくラムファードに話すことがあった。

 これは一種の韜晦だった。なぜならサロは、一時に一瞬間を生きながらも、ラムファードよりもはるかに多くの過去と、はるかに多くの宇宙を見てきたからだ。そして、はるかに多くのそれを記憶してもいた。

 サロの頭はまんまるで、ジンバルの上に載っていた。

 声は、自転車の警笛そっくりの電気的音響だった。彼は五千種類の言語を話すことができたが、そのうちの五十が地球の言語であり、そのうち三十一は地球の死語であった。

カート・ヴォネガット・ジュニア 浅倉久志訳『タイタンの妖女』ハヤカワ文庫

 彼は、あらゆるトラルファマドール星人とおなじように一個の機械なのである。

 彼はコッタピンや、締め金や、ナットや、マグネットによって、つなぎ合わされている。サロのミカン色の皮膚は、感情がかき乱されると実に表情ゆたかになるのだが、地球人のジャンパーのようにあっさり着脱がきく。マグネットのジッパーがそれを抑えているのだ。

カート・ヴォネガット・ジュニア 浅倉久志訳『タイタンの妖女』ハヤカワ文庫

 この形状をしているのはサロだけなのかもしれません。機械だから用途に応じて変わるという可能性もあります。


『スローターハウス5』のとき。

 一ヵ月ばかり何ごともなく過ぎた。が、ある日、イリアム・ニューズ・リーダー紙にビリーの投書が掲載された。投書は、トラルファマドール星から訪れた生物にかんするものだった。

 投書によれば、彼らの身長は二フィート、全身が緑色で、鉛管工事の吸いあげカップを思わせるかたちをしている。カップは地上にあり、柄にあたる部分――これはきわめて柔軟だが――は、ふつう空にむかってピンと立っている。柄の先端には小さな手、そして手のひらには、みどり色の眼球が一個ある。彼らは友好的である。また四次元的な視力を持ち、三次元しか見られない地球人をあわれんでいる。彼らは地球人に教えるすばらしい知識をたくさん持っているが、特記してよいのは時間にかんすることである。ビリーはそんなすばらしい知識のいくつかを、つぎの手紙で公表すると約束していた。

カート・ヴォネガット・ジュニア 伊藤典夫訳『スローターハウス5』ハヤカワ文庫

 『ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを』のとき。キルゴア・トラウトのペイパーバック『宇宙の三日間通行券』にトラルファマドール人が登場。

実のところ、司令官はまるきりおやじらしく見えない。トラルファマドールという惑星の出身で、地球産のビールの罐ぐらいの背丈しかないのだ。実のところ、司令官はビールの罐にも似ていない。どちらかというと、つまっった配水管を直すときに使う、柄のついたゴムのお椀に似ている。

カート・ヴォネガット・ジュニア 浅倉久志訳『ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを』ハヤカワ文庫