ドンデン

ドンデン

ドンデン
(一)ドンデン

小佐田 「ドンデン」ちゅうのは「どんでん返し」のことですか?

枝 雀 そうです。「こっちかいな」と思てたら「あっちやった」というやつですわ。それまで隠されてた新しい状況がパッとあらわれってサゲになる、いちばん鮮やかな型ですな。

小佐田 例えばどんな噺が?

枝 雀 いちばんはっきりした例が『愛宕山』でっしゃろね。

小佐田 『愛宕山』ですか……。

枝 雀 幇間が谷底へとび降りて、旦那がばらまいた小判をひろう。谷底から戻る段になってどないしてええかわからん。必死になって竹のバネの力を利用して旦那の前へとび上がってくる。旦那が「えらいやっちゃ。で、かねは?」ちゅうたら「忘れてきたァ」。これなんか見事なドンデン返しですわね。幇間が谷底から戻ってきた時、きき手は「ウワー、良かった良かった」と安心して小判のことなんか一時忘れてますわ。と言うより、無事帰って来てんから小判も当然持ってるもんと勝手に思い込むわけです。そこへ「忘れてきたァ」とサゲになりまんねん。

小佐田 なるほど、いったん安心するわけですな。

枝 雀 そうです。サゲの前に安心があるというのが「ドンデン」の一大特徴ですわ。「ドン」で安心して「デン」でひっくり返すわけですな。

小佐田 と、『愛宕山』で言うたら、幇間が谷底から上がってきて旦那から「えらいやっちゃなァ」と褒められるのが「ドン」で、「忘れてきた」が「デン」になるわけですな。

枝 雀 そうそう。その通りですわ。

小佐田 他に「ドンデン」の例としたら?

枝 雀 『高津の富』もそうですね。「人の枕元へ下駄はいたなり上がってくる奴があるか!」言うて宿屋の亭主叱るところが「ドン」で、「旦那も雪駄はいて寝てた」で「デン」となるわけです。この本では『八五郎坊主』が

ドンデン」ですな。八五郎が「わかっったわかっった」言うのが「ドン」ですわ。八五郎が名前思い出しよったんやと安心したところへ、「わいの名前は『はしか』ちゅうねん」で「そんなアホな」と「デン」になるわけです。

桂枝雀『らくごDE枝雀』ちくま文庫


(一)ドンデン

(二)謎解き

(三)へん

(四)合わせ