ハイホー

ハイホー

 カート・ヴォネガットの『スラップスティック』に頻出する表現。

 うち一部を抜粋。

プロローグ

 子供の頃、コメディアンの出る映画を見たり、コメディアンの出るラジオを聞いたりしていない時のわたしは、うちで飼っていたやたらに人なつっこい犬たちと敷物の上をごろごろ転げまわって、長い時間を過ごしたものだった。

 いまでも、わたしはよくそうする。犬のほうがわたしより先にくたびれ、とまどい、白けてしまう。わたしはいつまでもやっていられる。

 ハイホー

カート・ヴォネガット 浅倉久志訳『スラップスティック』ハヤカワ文庫

 もはやそれは、どこにでもざらにあるような都市だった。そこには自動車が住み、交響楽団やなにやかやがあった。そして競馬場も。

 ハイホー

カート・ヴォネガット 浅倉久志訳『スラップスティック』ハヤカワ文庫

 こんな話もしてくれた。叔父はニューヨークで、しばらく汚職の捜査員をやっていたらしい――両親から、もうそろそろ故郷へ帰って腰を落ちつけろと、いわれる前のことである。叔父は、グラントの墓の多額の管理費にまつわるスキャンダルを暴露した。実際には、その墓の管理に要する経費はごくわずかだったらしい。

 ハイホー

カート・ヴォネガット 浅倉久志訳『スラップスティック』ハヤカワ文庫

 「ソープ・オペラ!」と、姉は兄とわたしにいったことがある。自分で自分の死期が迫ったことを話していたときだった。あとには四人の坊やが、母なし子として残されることになるのだ。

 「スラップスティック」と、姉はいった。

 ハイホー

カート・ヴォネガット 浅倉久志訳『スラップスティック』ハヤカワ文庫

 メロディとは何者なのか? わたしの記憶に残る姉のすべてではないかと、そんな気もした。いまのわたしはこう信じている。メロディは、わたしが老いを実験するときに、そうなりたいと感じるもの、私の楽天的な想像力と、わたしの創造力の残り滓のすべてなのだ。

 ハイホー

カート・ヴォネガット 浅倉久志訳『スラップスティック』ハヤカワ文庫

 その疫病のせいなのだ、マンハッタンが(死の島)なる異名をかちえたのは。

 ハイホー

カート・ヴォネガット 浅倉久志訳『スラップスティック』ハヤカワ文庫

 近ごろの私の口癖は――「ハイホー」だ。これはなんというか、老人性のしゃっくりである。わたしは長生きしすぎた。

 ハイホー

カート・ヴォネガット 浅倉久志訳『スラップスティック』ハヤカワ文庫

 今日は重力がとても弱い。そのために、わたしは勃起している。こんな日には、すべての男性が勃起する。無重力に近い状態がもたらす自動的現象である。たいていの場合、それは性欲とほとんど関係がないし、特に私のような老人の場合は、まったく関係がない。それは流体力学的な体験だ――配管系統の混乱の結果で、それ以上のたいした意味はない。

 ハイホー

カート・ヴォネガット 浅倉久志訳『スラップスティック』ハヤカワ文庫

 ようやく、ふたりは答を出した。ふたりを代表しておもにしゃべったのはメロディだったが、そのメロディの大まじめな答はこうだった――「お祖父ちゃんと、イエス・キリストと、サンタ・クロース」

 ハイホー

カート・ヴォネガット 浅倉久志訳『スラップスティック』ハヤカワ文庫

 しょっちゅう「ハイホー」と書くのは、もう本当にやめようと思う。

 ハイホー

カート・ヴォネガット 浅倉久志訳『スラップスティック』ハヤカワ文庫

 だが、どういたしまして。わたしはいまだにピンシャンしている。イライザも、五十の年に事故で死ななかったら、きっとまだまだ元気だったにちがいない――火星の中国植民地のはずれで、山崩れに遭ったのだ。

 ハイホー

カート・ヴォネガット 浅倉久志訳『スラップスティック』ハヤカワ文庫

 もし、子供たちがイライザやわたしのような化け物だったら、わたしももっと養育に身を入れたかもしれない。

 ハイホー

カート・ヴォネガット 浅倉久志訳『スラップスティック』ハヤカワ文庫

 たぶん、もっと重要なのは、新しく二重に張りめぐらされた金網塀だろう。塀の上には有刺鉄線がひきまわされていた。第一の塀はリンゴ園の囲い。第二の塀は、ときおりリンゴの木の手入れにやってくる人夫たちが、屋敷をのぞき見するのを防ぐためだった。

 ハイホー

カート・ヴォネガット 浅倉久志訳『スラップスティック』ハヤカワ文庫

 しかし、当時のアメリカの状況からすれば、彼らとわたしたち一家のつながりは、いわば鯉と鷲のつながりよりも薄かった――わたしたちの一家は、すでに世界旅行者や百万長者に進化していたのだ。

 ハイホー

カート・ヴォネガット 浅倉久志訳『スラップスティック』ハヤカワ文庫

 歴史の奇妙にして、おそらくは無意味な脚注を一つ――のちに、モット先生の孫は、わたしの合衆国大統領在任第二期目に、ミシガン国王となった。

 また、しゃっくりが出そうだ――ハイホー

カート・ヴォネガット 浅倉久志訳『スラップスティック』ハヤカワ文庫

 わたしはここに誓う。もしこの自伝を完成するまで生きながらえて、しかももう一度目を通す時間があったら、「ハイホー」をぜんぶ抹消しよう。

 ハイホー

カート・ヴォネガット 浅倉久志訳『スラップスティック』ハヤカワ文庫

 イライザと私がふざけて人殺しをしでかそうになった場合だけ、このボタンは押されることになっていた。

 ハイホー

カート・ヴォネガット 浅倉久志訳『スラップスティック』ハヤカワ文庫

 ヴィーラ・チップマンク-5・ザッパの奴隷たちは、喜んでそれをつかまえ、スープにしている。

 ハイホー

カート・ヴォネガット 浅倉久志訳『スラップスティック』ハヤカワ文庫

 「そして、イライザとウィルバーがついに天国へ召される日がきたなら」と、父の手紙はつづいていた。「スウェイン家の先祖たちのあいだで安らかに眠れるよう、リンゴの木に囲まれた一族の墓地に、二人を埋めてやろう」

 ハイホー

カート・ヴォネガット 浅倉久志訳『スラップスティック』ハヤカワ文庫

 その他いろいろ。というわけで全49章がずっとこんな調子である。

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