パットだよ

パットだよ

パットだよ
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 この不思議な魔界のなかでも、こんなに奇妙な部屋には入ったこともないぞ。

 まず、四隅に鉄格子がある。ということは、きみはオリのなかへ入りこんでしまったということだ。バタンと入ってきた扉が大きな音をたてて閉まり、きみはオランウータンみたいに鉄格子にしがみついて、なぜこんなことになったのだろう、などと考えこんでいる。

 部屋の中央には、小さなテーブルに向かった地の精がいる。テーブルには、何も書かれていない何枚もの羊皮紙、羽根ペン、インクが置いてある。

「いやいや、ようこそ」地の精がいった。「ぼくの名まえはクリップン、黒騎士の代書人だ」

「このオリから出してくれ!」きみは叫んだ。「さもないと、鉄格子を破っておまえを朝食に喰っちまうぞ!」

「なかなか勇敢だけど、はは、愚かなことを。この鉄格子は、黒騎士のペットのドラゴンでさえ破れないようにできているんだよ。まあ、きみにはちょいと無理だね。だけど、いまぼくが頭をかかえている問題を解く手助けをしてくれたら、ま、出してあげてもいいな。黒騎士はまもなく、この地下迷宮にさまよいこんだピップとかいう間抜けとの戦いに勝利をおさめて、祝勝ディナー・パーティをやるんだけど、ぼくにその招待状を届けろというんだ。ところで、きみの名まえは?」

パットだよ」黒騎士の側近と闘う時期ではないので、きみは嘘をついた。

「よし、パット

J・H・ブレナン著/真崎義博訳『魔界の地下迷宮』二見書房