ブロンデル

ブロンデル

リチャード獅子心王のお気に入り吟遊詩人minstrel

第九章 いい子のリチャードと悪がきジョン

 おかしな話、イングランドのほうはリチャードが気に入ってたのに、リチャードはイングランドが好きじゃなかったみたいなんだ。サラディン王相手に、キリスト教十字軍(自分が正しいと思ったらソク攻撃っていうパターン)を率いて戦争してるほうが性に合ってたらしい。このサラディンは聖地エルサレムの回教徒たち(「異教徒」ともいうけど)の頭領で、手ごわい奴だった。それでリチャードが家を空けていたら、出先に電話が入って、弟のジョンが反乱を起こしてると識らせてきた。

 そこで最初の便に飛び乗ったんだけど、アクィレイア(アドリア海北端の町、ローマ時代の中枢都市)の近くでその船が難破しちゃって、そっから先、歩かなきゃなんなかったんだって。機嫌よくドイツ領をブラブラ歩いているうち(という話があるんだ)捕まって、牢にほうり込まれてしまった。ドイツの連中ったら、がめついんだから、返してほしかったら、身の代金三百万ポンド出せってイギリスに要求したんだね。リチャードのファン・クラブがせっせと募金活動しているあいだ、リチャードのほうは秘密の場所に監禁されてた。

 一年後リチャードお気に入りの(お気に入りってどういうことって、聞きたそうだな)吟遊詩人ブロンデルはギター抱えてヨーロッパ中のお城を回り、外からご主人お気に入りの歌をかき鳴らしたもんだから、ドイツ人にしたら、こいつ、ちょっといかれてると思ったんじゃないかしらん。でもある日、リチャードがその歌に合わせて歌うのが聞こえてきて、とうとう居場所が分かったんだ。

ジョン=ファーマン『とびきり愉快なイギリス史』ちくま文庫
とびきり愉快なイギリス史 (ちくま文庫)

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