ペリノア

ペリノア

98

鋼鉄の処女ルーシー〉のふたがギギギィ~~~~イときしみながら開いた。

 と、なかから、カビまみれの黒い兜をつけた男が出てきた。

「ピップではないか!?」

 きみの名前を知っているぞ。聞き覚えのある声だ……。

「ピップよ、わしじゃ、キャメロットの”円卓の騎士”の重鎮――」

「ランスロットですか?」

「ちがう!」

「パーシバル?」

「ちがう、ちがう!」

「じゃ、ギャラハッド?」

「ちがうちがう、ちがう!」

「とすると……」きみが首をかしげていると、相手はいらだっていった。

「頭文字は”ぺ”じゃ」

「ぺ? ペ、ペ、ペ、ペ……ペ」

「次の文字は”リ”じゃ!」相手はいっそういらだって叫んだ。

「リ? ペ……リ……ペリ、ペリ、ペリ……ペリカン!」

「ばかもの! まだわからんのか!! 次なる文字は”ノ”じゃ!!」

「ノ? ペ……リ……ノ……ペリノ、ペリノ、ペリノ……」

「ピップ、いいかげんにしろ! 脳ミソにカビが生えたか!?」

 騎士はカビだらけの兜をとると、大声で怒鳴った。

「最後の文字は”ア”じゃ!!」

「ア?ペ……リ……ノ……ア……ああ、ペリノア王ですか」

 ペリノアは舌打ちすると、むくれて押し黙っていた。

「こんなところで、いったい何をなさっていたんです?」

 きみがたずねると、ペリノアは目をそらし、ひとつ咳払いしてから照れくさそうにいった。

「じつは、ここに治療を受けにきたんじゃ。持病のリウマチが悪化したもんで、医者と看護婦に診てもらっておると、なんだか急にようすがおかしくなりおった。カビが雪のように降ってきたかと思うと……医者は拷問人に、看護婦は鋼鉄の処女に変身しおっていきなり余に抱きついてきた。それからは……見てのとおりじゃ」

 ペリノアは肩をすくめた。

「いつからここに?」

 するとペリノアは首を振ってつぶやいた。

「記憶にない……」そしてペリノアは気をとりなおすと、「そんなことより、ピップ。この呪われたキャメロット城を救うには、アーサー王の父君……ええと……なんといったかな?」

「頭文字は”ペン”です」

「ペン? ペン、ペン、ペン……ペンギン!」

「はずれ! 次の文字は”ドラ”です」

「ドラ? ペンドラ……ペンドラ……」

「最後は”ゴン”です」

「ゴン? そうじゃ、ペンドラゴンじゃ。どうやらこのカビは人の記憶をあいまいにしてしまうな。さてピップよ、そのペンドラゴンの秘宝のなかにある〈鏡の盾〉を手に入れないことには、このカビの呪いをとくことはできないんじゃ」

J・H・ブレナン著高橋聡訳『宇宙幻獣の呪い』二見書房