ミニマイト

ミニマイト

妖精、ミニマイト――そして魔法の危険

 妖精とミニマイトはかつてはべつの種族だと考えられていた。姿はよく似ているものの(彼らはとても小さな人間型の生き物で、羽根が生えている)、妖精が素直で素朴なのにたいし、ミニマイトはとても頭の回転が速く、文明化されていたからである。妖精は先に述べた種族とおなじように森に住み、そこで植物や動物の面倒を見つつ、平和に暮らしている。彼らは優しく内気な種族で、人間やその他の大きなものを恐れている。しかし、彼らはエルフとは非常に相性がよく、おなじように植物を愛する魔法使いとして、折り合いよく暮らしている。妖精たちは自分がとても豊富な魔法をかけられると思い、それを鼻にかけているが、実際にはその魔法はまじない程度で、熱心な見習いが魔法の訓練を二、三週間行なってかけるのとほとんど大差はない。しかし、エルフたちは妖精が魔法に熱中するのに共感し、その喜びを一緒になって認めている。

 ミニマイトは妖精よりももっと洗練されていて、ふつうは妖精とつながりがあることを認めない。彼らには長く入り組んだ歴史があり、かつて、その文化は非常に高かった。世界の各地で魔法大戦によって多くの人が死ぬまでの数世紀、ミニマイトは旧世界で学術の重要な席のいくつかを占めていた。この種族は偉大な知性を持つと認められ、世界の歴史を飽くなきまでに収集するその努力は尊敬されていた。ミニマイトはブライス人の戦略について何時間も論説し、”巨人殺し”ビヨルングリムや”隠者”ジナ・アラジャールの長い英雄譚を語り、長く激しい魔法の儀式を執り行うことができた。彼らはそのひ弱い体にもかかわらず、高等魔法をかけるときも楽々と人間に匹敵したが、善の大義に身を捧げていて悪いことには決して使わなかった。

 混沌の勢力がカーカバードに現れだすと、ミニマイトはとても恐れた。アランシアとクールを頻繁に飛び交う戦争の知らせはぞっとするもので、何かが行われなければ、この第三大陸もその流れに呑みこまれてしまうだろうと、みんなが思い始めた。ミニマイトの最高の学者と魔術師たちは、古文書や古代の魔法書の中に、この問題に対する解答の鍵を捜そうと長い必死の作業にかかった。だが、五か月かかっても何も見つからず、混沌の勢力はアナランドやラドルストーンなどの門口を激しく叩きつけていた。やけになって、ミニマイトはその他のもっと怪しげな書物を必死にあさりはじめた。

 ”光を追う者”オーグムという名前のみ知られている狂気の神秘家が書いた論文の中に、彼らは答と思えるものを見つけた。正気とは思えぬメモの中に、ミニマイトは善そのものの力を呼び出し、一瞬に恐ろしいほどの力を爆発させて解放する、とても危険な技術を見つけたのだ!ミニマイトはそれを試みなければならなかった。彼らの力の源と、人間のもっとも偉大な魔術師たちのそれとを合わせ、彼らはモーリステシアの山頂に集まり、儀式を行った。彼らが踊り、泣き叫び、祈るにしたがい、ゆっくりと、カーカバードじゅうから呼び集められた混沌の軍勢が山の麓に集まってくるのが聞こえるようになった。緊張はどんどんと高まり、祈りは狂気を感じさせるほどに速くなり、混沌の生き物は下で吼え立てる。そして突然、大変動を思わせる閃光がきらめき、天上より金色の光の矢が何本も走り、混沌の軍勢を叩いた。矢が直撃したところでは光が混沌の力を中和し、たがいを蒸気に変えた。まばたきする間もなく、混沌の軍勢のほとんどは分子にまでばらばらに吹き飛ばされ、わずかに残ったものはカーカバードへと逃げ戻った。

 だが、勝利には犠牲がつきまとう。この野蛮な魔法を身につけたミニマイトの一種族はその力に夢中になり、ほかの者にもそれを追い求めることを教えた。そして、ミニマイトがその知恵と魔術で他者を教え導き、世界の慈悲深い統治者となるという夢を見はじめた。しかし、ほかのミニマイトはこの夢を専制の夢とみなした。答は一つしかなかった――一人だけでは、ミニマイトには偉大な魔法の力はない。だから、ミニマイトが団結することを避ければよい。そして、この種族は放浪の種族となり、世界をさまようよう宣告を受けた。生体組織そのものに折りこまれた複雑な魔法の力で、種族のほかのものと決して力を合わせられなくなったのだ。

M.ガスコイン編安田均訳『タイタン』社会思想社