ヤクザ

ヤクザ

博奕打の話

 さし向き申し上げたいのは「ヤクザ」といふ言葉です。これは私どもも知つて居りますが、文字に書く場合にはどう書いたらいゝか。この頃の例は知りませんが、昔のものには「八九三」と書いてある。何故「八九三」がヤクザであるかといひますと、これには由来がある。博奕は賽の目と加留多と大体二様ありまして、これを賽事(さいごと)、札事(ふだごと)と申します。この「八九三」は札事の言葉で、私は新井白蛾の「牛馬問(ぎゅうばもん)」に教へられました。それにはかう書いてあります。

物の悪きをヤクザと云事は、博奕に三枚といふものをするに、八九の数を高目上々として、十とつまるは数にならずう、八九三なれば廿(にじゅう)につまる故、益(やく)にたゝず、それより彼輩のうちにては、すべて物の悪き事の隠語を八九三\/といひ始たると也。

 加留多のことは山崎美成(よししげ)の「博戯犀照」に書いてあります。三枚加留多はヲヨイテウカブ、またカブとのみもいひますが、今日の人は何も知らずにヤクザといふ言葉を使つて居りますが、実は博奕打の畠から出た言葉であります。

三田村鳶魚『侠客と角力』ちくま学芸文庫
侠客と角力 (ちくま学芸文庫)

侠客と角力 (ちくま学芸文庫)

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