リカードの罠

リカードの罠

アジア史発展の再評価

リカードの罠」とは、土地資源の制約が近代産業の持続的成長の挫折させ、停滞の罠におとしいれてしまうつぎのようなメカニズムをいう。経済成長の起動力は近代的産業における資本蓄積である。資本が増加し、労働者に支払う賃金の基金が増大すれば、労働需要も増加する。こうして投資がおこなわれ賃金基金がふえれば賃金は上昇することになるが、賃金が生存賃金を上回ると人はねずみ算的に子供を産むというマルサス的人口法則に従って人口がそれ以上に増加してしまうために、賃金は生存賃金に押しもどされる。その結果、工業の賃金コストは上昇せず、資本の増加に比例して利潤は増大し、それが再投資され、工業雇用と生産は拡大し続けるはずである。しかし、問題は、賃金と深くかかわる農業生産に土地に制約があることである。生存賃金は食料価格に依存するが、農業は土地に制約されるために、より劣等な土地がつぎつぎと開拓されてゆくにつれて収穫が減っていき、食糧生産に必要なコストが増加してしまう。農業生産しようとする者は、より優等な土地を借りて生産を行いたいから、地主にたいして、より劣等な土地へと比べて生産費の低い分だけ多くの地代を支払うことになる。人口がさらにふえ、食糧需要が増加するとますます劣等な土地での生産が必要になるために、地代はさらに増加する。となると、食料価格も上昇するので、労働者の生存賃金が上昇してしまい、その結果、資本の利潤率が低下し、経済成長は停止する、というものである。

水島司『グローバル・ヒストリー入門』山川出版社
リカードの罠と穀物法

 リカードの罠から逃れるには、生存賃金の上昇を抑制する食糧供給の増加があればよいことになる。しかし、イギリスの場合、地主階級が議会の多数を占めていたことから、穀物の高価格維持を目的として一八一五年に輸入規制をおこなう穀物法が成立した。それにたいして、生存賃金の上昇をきらうブルジョア階級は自由貿易を訴え、一八四六年に穀物法撤廃に成功した。

水島司『グローバル・ヒストリー入門』山川出版社

グローバル・ヒストリー入門 (世界史リブレット)

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