ワザモノ

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 特に切れ味の優れた刀剣「業物」という言葉は、いつ、誰が作ったのだろうか。

 刀の利鈍、つまり切れ味は実際に試さなくては判定できないが、江戸時代だからといって誰にでもできることではなかった。被験の死体が必要だったからだ。その試し切りを生業とする立場で古今の名刀の切れ味を検分して、業物なる造語を世に定着させた人物がいた。御様御用(おためしごよう)首斬り役を務めた山田家の五代目当主・山田朝右衛門吉睦である。

牧秀彦『剣豪 その流派と名刀』光文社新書

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 結果として、山田家には歴代の当主が試した古今の名刀の切れ味に関するデータが蓄積されるに至った。この膨大なデータを編纂し、初めて刊行したのが五代目当主となった朝右衛門吉睦なのだ。

 寛政九年(1797)の『懐宝剣尺』には最上大業物十二工、大業物二十一工、良(よき)業物四十八工、業物九十九工の四段階、計百八十工が掲載された。再版、さらに増補改訂版として文政十三年(1830)に『古今鍛冶備考』が出ているが、最終的に選ばれた最上大業物は、古刀から孫六兼元(初代・二代)や肥前忠吉(初代)、和泉守兼定(二代之定)など七工。新刀からは長曾禰虎徹・興正父子など八工。合わせて十五工である。

牧秀彦『剣豪 その流派と名刀』光文社新書
剣豪 その流派と名刀 (光文社新書)

剣豪 その流派と名刀 (光文社新書)