七匹の大蛇

七匹の大蛇

 七匹の大蛇

 このころ、おそらく十年か十五年前、伝説によれば大魔王は注目すべき戦いをした。それまで彼はずっと黒魔術を学び続け、その不浄な下僕はますます遠くまで襲撃を重ねて、バドゥ・バクの孤立した居留地や、その近くのイルクララ湖岸にまで恐怖をまき散らしていた。しかし、彼らがザメンの反対がわのアヴァンティの森をのぞむ洞窟を探ったとき、ヒドラと出くわしたのだった。

 壮絶な戦いはまる二日続き、そのあいだ激しい魔法が炸裂して、山の峰を焦がした。大魔王は激しい火傷のほかに深い傷も負い、それは見る目も鮮やかに彼の首から右膝へと走った。しかし、最後にはヒドラは敗れ去った。

 しかし、この恐るべき敵の力と頑強さに深い感銘を受けた大魔王は、七つの首を切り取って、それぞれに強力で複雑な魔法をかけた。死人使いの技をすべて使って、七匹の翼ある蛇として蘇らせたのだ。そして、おそらく趣味の悪い冗談か、あるいは、彼自身がまだこの時点で信仰していたのかもしれないが、それぞれの蛇に旧世界での神々の名を付けた。グランタンカの力は太陽蛇にルナーラの力は月蛇に、さらに四匹の蛇はそれぞれ地水火風の神に対応するように。そして、謎に満ちたカーカバードの時の神、クロナーダの力を最後の蛇に。いまでも七匹の蛇は、この膿んだ地の情報を彼に伝えようと仕えているという。

 そしていま、噂では彼は鳥男を使って、アナランドの王から”王たちの冠”を手に入れたらしい。これで彼が得た力のことを考えると、われわれは身いせざるをえない。大魔王の魔の手はおそらくカーカバードだけにとどまらないだろう。いかに手ごわい戦いになろうとも、君はこれを肝に銘じておくべきだ――いったん彼が冠による王権の甘い果実を味わったなら、その征服計画によって旧世界すべてが安全から遠ざかるはずだと。

M.ガスコイン編安田均訳『タイタン』社会思想社