七聖典

七聖典

 マニ教(マーニー教)の教祖自身が著述し、定めた聖典。

1 人工の宗教・書物中心の宗教・神話的表象の宗教

書物中心の宗教

マーニー本人は『シャーブフラガーン』を重要視していなかったのか、このアラム語書物だけを「世紀の教義」が記載された「七聖典」に指定している(後のイスラーム教徒著述家の中には、イブン・アン・ナディームのように、『シャーブフラガーン』をマーニー教聖典に含める者もいるが)。それが、以下の七冊である。

 ①『大いなる福音』:マーニーを最後の預言者とする預言者論

 ②『生命の宝庫』:マーニー教の教義大系

 ③『伝説の書』:神々や人間の創造を神話的に表現

 ④『奥義の書』:バル・ダイサーン派やユダヤ教の神話への反駁

 ⑤『巨人の書』:『伝説の書』と並んで、マーニーの教義を神話的に表現

 ⑥『書簡集』:マーニーが各地へ派遣した使徒たちに与えた書簡集

 ⑦『讃歌と祈祷文』:アラム語の韻律による詩編と祈祷

 一般に、ある宗教の聖典は後世の信徒たちが個別に編集してしまうのが常で、どこからどこまでを聖典の範疇に含めるかに関して大論争が勃発するのであるが、マーニー教の場合は教祖が自分で聖典を執筆し、自分でその範囲まで指定しているという抜かりのなさが特徴である。

 これに加えて、絵心にも恵まれていた才人マーニーは、

  『アルダハング』:マーニーの福音を図解するための絵画集

という芸術作品をも仕上げたらしい。古代世界では写本を作成する場合、それが高級なものであれば必ずミニアチュールを描き込むから、いかにも書物好きのマーニーらしい配慮である。後年、この教祖の嗜好はそれだけで独立し、中世のイスラーム教徒が「キリスト教徒は教会建築を立てまくり、マーニー教徒は写本と絵画を作成しまくる」と述べているように、独特のマーニー教芸術を生みだした。

青木健『マニ教』講談社選書メチエ
マニ教 (講談社選書メチエ)

マニ教 (講談社選書メチエ)