中国古典新書続編 刊行のことば

中国古典新書続編 刊行のことば

刊行のことば

 昭和四十二年より十八年の歳月をかけて中国古典新書全百巻を完結し、学界・読書会にいささか寄与できましたことを、読者の皆様にまず御礼申し上げておきます。

 この十八年間、出版界は好況から不況へ、急激な変化をとげて参りました。中でもいちじるしいものはコミック本・写真誌の躍進でした。テレビ時代を迎えて、頭で読んで考えるより、手っとり早く目で追う時代になり、学術的な堅い単行本はコピー機器の普及と共に、年々書架の片隅に追いこまれて参りました。しかしながら、人間の思考はやはり自ら読んで自ら考えるところに原典があります。少くとも人生を考え、この時代を観察する場合、まだまだ読書は人間にとってもっとも拠り所となる思考方法であります。小社は昭和二十九年創設以来東洋思想の解明と普及のために一貫した道を歩いて参りました。今後も時流に迎合せずに、この初志を貫いて参ります。それが出版人に課せられた使命であると確信するからであります。

 さらにこの十八年間、隣国中国も大きな変貌を遂げました。過渡期の共産主義一色から自国の文化を土台とする文化政策に方向転換しております。それは中国古来の物の考え方や価値意識の中に、現代を生きる道徳があるからでありましょう。いかに科学が発達し、生活が便利になっても精神面の裏打ちがなくては、人は心の安らぎを得られません。五千年来残され伝えられてきた古典の中には、人間の英知が結集されております。一年や二年で忘れ去られる片々たる小説類とは根本的に重さが違います。この中国五千年を支えてきた古典は、やはり百巻では収まりませんでした。この我々の尊い精神遺産を、さらに糧として日常制圧の中に活かせるように紹介して参りたいと存じます。どうか御支援・御味読をお願い申し上げます。

中国古典信書続編 刊行のことば 明徳出版社