丸谷才一の表記法

丸谷才一の表記法

わたしの表記法について
  • a1 漢字は常用漢字とか音訓表とかにこだはらないで使ふ。
    • 2 字体は原則として新字。ただし新字のうちひどく気に入らないもののときは正字。例、昼→晝。尽→盡。蔵→藏。芸→藝。証→證。
  • b1 仮名づかひは歴史的仮名づかひ。例。会ふ。をかしい。あぢさゐ。
    • 2 従つて促音・拗音は小さくしない。例。あつさり。キヤツキヤツ。
    • 3 ただしカタカナの外来語の場合は促音・拗音を小さくする。例。ヨーロッパ。カチューシャ。
    • 4 歴史的仮名づかひのうち、特に誤りやすいもの。「あるいは」(アルヒハとしない。)
  • c1 ただし字音の仮名づかひのは、原則として現代仮名づかひに従ふ。例。怪鳥(カイチヨウ←クワイテウ)。草稿(ソウコウ←サウカウ)。
    • 2 しかし「嬉しさう」などの「さう」(相)、「花のやう」などの「やう」(様)は、字音ではあるが、もはや大和言葉も同然と考へて、「さう」「やう」と書く。(「相似」はソウジ、「模様」はモヨウ。)
    • 3 熟語のせいでの促音は漢字の原音を尊ぶ。例。学校(ガクコウ←ガツコウ)。牧歌(ボクカ←ボツカ)。
    • 4 チヂ、ツヅの清濁両音のある漢字の場合、チヅを認める。例。地獄(ヂゴク←ジゴク)。連中(レンヂユウ←レンチユウ)。僧都(ソウヅ←ソウズ)。
    • 5 字音の仮名づかひのうち、特に誤りやすいもの。「――のせい」(セヰとしない。「所為」の字音ソイの転だから)。
  • d1 送り仮名は送りすぎないやうにする。例。当る←当たる。受付←受け付け。
丸谷才一『日本語のために』新潮文庫
完本 日本語のために (新潮文庫)

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