二条河原落書

二条河原落書

二条河原落書

 此比(このころ)都ニハヤル物。夜討強盗謀綸旨(にせりんじ)。召人早馬虚騒動。生頸(なまくび)還俗自由出家。俄大名迷者。安堵恩賞虚軍(そらいくさ)。本領ハナルヽ訴訟人。文書入レタル細葛(ほそつづら)。追従讒人禅律僧。下克上スル成出者(なりでもの)。器用ノ堪否(かんぷ)沙汰モナク、モルヽ人ナキ決断所。キツケヌ冠上ノキヌ。持モナ(慣)ラハヌ笏持テ。内裏マジ(交)ハリ珍シヤ。……誰ヲ師匠トナケレトモ。遍クハヤル小笠懸。事新キ風情也。京鎌倉ヲコキマセテ、一座ソロハヌエセ連歌。在々所々ノ歌連歌。点者ニナラヌ人ソナキ。

        (『建武年間記』)

『詳説 日本史研究』山川出版社

太平記の時代  日本の歴史11 (講談社学術文庫)

太平記の時代 日本の歴史11 (講談社学術文庫)

『二条川原落書』


 此比都ニハヤル物    夜討・強盗・謀綸旨

 召人・早馬・虚騒動    生頸・還俗・自由出家

 俄大名・迷者       安堵・恩賞・空戦

 本領ハナルヽ訴訟人    文書入タル細葛

 追従・讒人・禅律僧    下克上スル成出者

 器用堪否沙汰モナク    モルヽ人ナキ決断所

 キツケヌ冠・上ノキヌ   持モナラハヌ笏持テ

 内裏マシハリ珍シヤ    賢者カホナル伝奏ハ

 我モ\/トミユレトモ   巧ナリケル詐ハ

 オロカナルニヤオトルラム 為中美物ニアキミチテ

 マナ板烏帽子ユカメツヽ  気色メキタル京侍

 タソカレ時ニ成ヌレハ   ウカレテアリク色好

 イクソハクソヤ数不知   内裏ヲカミト名付タル

 人ノ妻鞆ノウカレメハ   ヨソノミル目モ心地アシ

 尾羽ヲレユカムエセ小鷹  手コトニ誰モスエタレト

 鳥トル事ハ更ニナシ    鉛作ノオホ刀

 太刀ヨリオホキニコシラヘテ 前サカリニソ指ホラス

 ハサラ扇ノ五骨      ヒロコシ・ヤセ馬・薄小袖

 日銭ノ質ノ古具足     関東武士ノカコ出仕

 下衆上臈ノキハモナク   大口ニキル美精好

 鎧・直垂猶不捨      弓モ引ヱヌ犬追物

 落馬矢数ニマサリタリ   誰ヲ師匠トナケレトモ

 遍ハヤル小笠懸      事新キ風情也

 京鎌倉ヲコキマセテ    一座ソロハヌエセ連歌

 在々所々ノ歌連歌     点者ニナラヌ人ソナキ

 譜第非成ノ差別ナク    自由狼藉ノ世界ナリ

 犬・田楽ハ関東ノ     ホロフル物ト云ナカラ

 田楽ハナヲハヤルナリ   茶香十炷ノ寄合モ

 鎌倉釣ニ有鹿ト      都ハイトヽ倍増ス

 町コトニ立篝屋ニハ    荒涼五間板三枚

 幕引マワス役所鞆     其数シラス満々リ

 諸人ノ敷地不定      半作ノ家是多シ

 去年火災ノ空地共     クソ福ニコソナリニケレ

 適ノコル家々ハ      点定セラレテ置去ヌ

 非職ノ兵杖ハヤリツヽ   路次ノ礼儀辻々ハナシ

 花山桃林サヒシクテ    牛車華洛ニ遍満ス

 四夷ヲシツメシ鎌倉ノ   右大将ノ掟ヨリ

 只品有シ武士モミナ    ナメンタラニソ今ハナル

 朝ニ牛馬ヲ飼ナカラ    夕ニ賞アル功臣ハ

 左右ニオヨハヌ事ソカシ  サセル忠功ナカレトモ

 過分ノ昇進スルモアリ   定テ損ソアルラント

 仰テ信ヲトルハカリ    天下一統メツラシヤ

 御代ニ生テサマ\/ノ   事ヲミキクソ不思議共

 京童ノ口スサミ      十分ノ一ソモラスナリ

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