八幡国

八幡国

 孤立した王国、八幡

 内海の東には、人肉を食らう小型のトカゲ兵や、他の獰猛な人類の敵どもが住む危険なジャングルがあるのみだ。そうした植物の茂る土地は山麓へと変わり、内海に住む人間たちには未だ名付けられていない通行不能の山脈へと連なる。しかし、この山脈の反対側に住む人々のぎこちない言葉では、それはシオズイイ山脈とよばれている。この八幡王国は山脈の陰にあり、クールの残りの部分からは完全に断ち切られている。きわめて肥沃で天然資源にも富んでいるため、住民はその地を孤立させている天にもそびえる峰々を決して越えようと考えたりしない。それに、彼らは腕のいい船乗りというわけでもないので、南の海岸に沿って遠くへ旅とすることもなかった。

 その孤立の中で、八幡国の人々は、戦闘での驚くべき技を身につけた戦士支配階級と深遠なる精神信条とを組み合わせ、まったく独自の文化を発展させた。八幡国の統治者は将軍として知られ、国のあちこちに散らばった小さい荘園を収める中小貴族の上に君臨している。八幡国の普通の住民は農夫で、その封建君主と領主に奴隷も同然に縛られている。それでも彼らは、自分たちの分をわきまえること、農夫の役割も領主と同じように物事の枠組みの中では重要だと考える文化の中で育ったため、幸せなのだ。他のもっと暴力に満ちた国がこうした信条を持って、そこから平穏さという利益を引き出せていたらと残念に思えるが、一方、もしすべての国がお互いにそうなれば、タイタンの世界はつまらない所になっていたかもしれない――冒険者など、およびでないからだ! われわれは、そうした事態が決してこないように祈りを捧げるべきなのだろうか?

M.ガスコイン編安田均訳『タイタン』社会思想社