十万フランの家

十万フランの家

十万フランもする家

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 小惑星B612についてのこんな小さな話をぼくがみんなにしたのは、しかもその数字までわざわざ教えたのは、おとなたちのせいだ。おとなたちは数字が大好き。新しいともだちについてきみがおとなたちに話してあげても、おとなたちは決して本質的なことについては質問しない。たとえばこんなことは絶対に訊かない。「どんな声をしてる? どんな遊びが好き? 蝶を集めてる?」かれらが訊くのは次のようなことだ。「いくつなの? 兄弟は何人? 体重は? お父さんの年収は?」それだけ訊いてやっと、ともだちのことを知った気になるのだ。おとなたちに、こんなふうにいってみるといい。「薔薇色の煉瓦でできたきれいな家を見たよ、窓にはゼラニウムが咲き屋根には鳩がいた……」おとなたちはその家を想像することもできない。こういってやらなくてはならないのだ。「十万フランもする家を見たよ」と。するとかれらは感嘆する。「なんて素敵な家だろう!」

サン=テグジュペリ 管啓次郎『星の王子さま』角川文庫