合わせ

合わせ

合わせ
(四)合わせ

小佐田 いよいよ四つ目の「合わせ」ですけども……。

枝 雀 これはね、セリフでも趣向でもなんでもええんですけど人為的に合わせることでサゲになるわけだ。

小佐田 「合わせる」て、どういうふうに合わせまんのン?

枝 雀 これは例をあげて説明したほうがわかりやすいですわ。『蔵丁稚』ちゅう噺がおますね。芝居好きの丁稚が、仕事をサボって芝居を見てたのがバレて蔵の中へ放り込まれてしまう。その中で、今見てきた『仮名手本忠臣蔵』の『判官切腹の場』の真似をはじめるんですね。そこへ折檻がすぎたかと心配した旦那が、おなかもすいてるやろとおひつを持ってやって来る。おひつを蔵の中へ差し入れて「御膳」。丁稚が「蔵の内でか」。「ハハーッ」。「待ちかねた」……でサゲです。これは、芝居の『判官切腹の場』の由良助と判官さんのセリフの「御前」。「由良助か」。「ハハーッ」。「待ちかねた」……というのと意識的に合わせてるわけです。で、これを聞いた人が「なるほど、うまいこと合わせよったなァ」。「うーん、みごとにこしらえよったなァ」ということでサゲになるわけですわ。

小佐田 これは、セリフを合わした例ですな。趣向を合わせたという例は……?

枝 雀 『天狗裁き』でっしゃろね。嫁さんに寝てるとこを起こされて「どんな夢見たん?」とたずねられるのが発端で、それから次々に色んな人にたずねられて、しまいに天狗に夢の話をせえと強迫される。と、実はこれまでのストーリーが全部夢の中のことで、うなされるとこを嫁はんがゆり起こして「どんな夢見たん?」とたずねる――という、これはきっちり発端のセリフもそうですけど趣向がピターッと合うてるわけです。あと、言葉を合わしたほうの例で変わったんでは文我兄さんが演らはる『死ぬなら今』。このネタなんか、のっけに「死ぬなら今」というサゲを言うてしまいますねん。で、なんやかんやがあって、とどのつまりが地獄の役人連中がひとりもおらんようになって、「死ぬなら今」ということになるというシャレた噺です。これなんか、「合うた!」という快感を味わうネタでんなァ。

小佐田 この本に「合わせ」はおますか?

枝 雀 おます。『宿替え』でんがナ。「親を忘れる」と「我を忘れる」が対応語になっててこれが合うてますがナ。

小佐田 ヘェー。ほたらなんですかいな、この本には計らずも四つのサゲがひととおり揃たわけでんなァ。こら奇遇じゃなァ~~。

枝 雀 なにを目ェむいてなはんねん。「計らず」て、ほんまは計ったんとちゃいまんか?

小佐田 え? わかりますかえ。ほんま言うたらちょっとだけ、二百匁ほど計ったン。

枝 雀 なんじゃ味噌計ってるみたいに言うてなはる。これで、ざっとですけどサゲの四分類の説明をさしてもろたんですが、おわかりになりましたかいな?

小佐田 いや、ありがとう。

枝 雀 「ありがとう」やおまへんがナ。

桂枝雀『らくごDE枝雀』ちくま文庫


(一)ドンデン

(二)謎解き

(三)へん

(四)合わせ