夜の言葉

夜の言葉

解説

スーザン・ウッド

 竜の物語に耳を傾けない人々はおそらく、政治家の悪夢を実践して人生を送るよう運命づけららていると言っていいでしょう。わたしたちは、人間は昼の光のなかで生きていると思いがちなものですが、世界の半分は常に闇のなかにあり、そしてファンタジーは詩と同様、夜の言葉を語るものなのです。

 この警告、バランスの必要性を思い起こさせてくれるこの言葉は、詩人でありファンタジー作家であり、かつまた竜の創造者でもあるアーシュラ・K・ル=グウィンによるものである。

ル=グウィン著 山田和子他訳『夜の言葉』同時代ライブラリー 岩波書店
解説

スーザン・ウッド

ル=グウィンはさらにつづけて――

 ほとんど同じ形で、と言っても芸術には普遍的に当てはまることなのですが、作品化されたファンタジーは、言語領域のイメージと論理的な叙述形式に翻訳された、無意識世界の近くや直観――身体言語(ボディ・ランゲッジ)、夢の素材、原初的な思考過程――であると言えましょう。この特質(イディオム)は、その極度の私的性(プライバシー)にもかかわらず、わたしたちの誰もが――英語圏の者であろうとウルドゥ語をしゃべる者であろうと、また五歳であろうと八十五歳であろうと、すべての人間が共有していると思われるものです。魔女、竜、英雄。夜の旅、手助けをしてくれる動物、隠された宝物……わたしたちはみな、それらを知っており、認知することができます(なぜなら、ユングが正しいとするならば、これらは思考の深淵かつ本質的な様態を表象しているものだからです)。現代のファンタジーはこれらを現代の言葉に翻訳しようという試みなのです。

ル=グウィン著 山田和子他訳『夜の言葉』同時代ライブラリー 岩波書店