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第一の散歩
要するに、僕は地上でただの一人きりになってしまった。もはや、兄弟もなければ隣人もなく、友人もなければ社会もなく、ただ自分一個があるのみだ。およそ人間のうちで最も社交的であり、最も人なつこい男が、全員一致で仲間はずれにされたのである。どういう苦しめ方が僕の敏感な魂に最も残酷であるかと、彼らはその憎悪の極をつくして考えめぐらしたのだ。そのあげくが、僕と彼らを結ぶ羈絆をことごとく理不尽にも断ち切ったのである。そのような仕打ちを受けても、僕は彼ら人間を愛したつもりだった。彼らが人間であるかぎり、僕の愛情からはのがれえないはずだったのである。
ルソー 青柳瑞穂訳『孤独な散歩者の夢想』新潮文庫