年の数えかた

年の数えかた

年の数えかた

 「名前の時代」――このときに、さまざまなものは時の終わりまで続く名称をそれぞれあたえられたのだが――に、それぞれの年にはタイタンを闊歩する偉大な動物を記念した名が割り当てられた。いまでも、これらの名誉ある名は二十年周期で回っている。以下のようなものだ。

1 竜の年6 山羊の年
2 獅子の年7 鼠の年
3 蛇の年8 鹿の年
4 牛の年9 蝙蝠の年
5 虎の年10 狼の年

11 鷹の年16 鰐の年
12 犬の年17 梟の年
13 蜘蛛の年18 猫の年
14 兎の年19 鮫の年
15 狐の年20 馬の年

 アランシアや他の地の星占い師は、特定の動物の年に生まれた人間には、その動物の特徴が現れると信じている。たとえば、”梟の年”生まれの者は高貴で賢明だが、隠れた獰猛さを秘めている。”鹿の年”に生まれた者はおとなしく、神経質な成長のしかたをし、いつもできるだけ危険から遠ざかろうとする、というような信仰だ。これが真実であろうとなかろうと、ほとんどの人々は自分の生まれ年の動物に非常な尊敬を抱いており、二十歳になって成人し、大人と認められたときには、その動物に感謝する。


 二十年の周期は”回帰”とよばれる。だから、たとえばある老人は、自分が三回帰まえの蜘蛛の年生まれだ、というような言い方をする。もちろん、すでに述べたように、もっと文明化されたところでは、きっちりとした年の数えかたをしている。これは、魔法大戦後の既知世界のいろいろな学府で、学者たちが標準化した暦法によるもので、やがてAC(混沌後)という数えかたに統一された。つまり、現在はAC二八四年、狐の年、というよびかたである。かくして、先ほどの老紳士が、もう少し教育を受けていて、一般には未知の数学手法に通じていたならば、自分はAC二二二年の生まれで、六二歳の尊敬されるべき歳になっていると言うことだろう。


 他の土地では年の数えかたにまったくちがった方法をとっている(しかし、一部の土地、アランシア北東部のフロストホルムなどでは、人々は暦をまったく使っていない。彼らは誕生日や暦といったものをまったく知らないか、気にもかけないのだ)。多くの人々は、重要な事件後何年かで、自分たちの人生を数える。たとえば、”ヴィモーナ峠の戦い後四年目”とか”ハーリンがケインレッシュ・マのシャカシュ王の首をはねてから十七年目”という方法だ。カーカバードのバドゥ・バク平原に住む亜人の遊牧民の暦は、現在から昔に遡る数えかたで表される。言い換えると、去年は一過去年であり、先の老人は六十二過去年に生まれたことになる。はるかなクールの八幡国の人々は八年の周期で年を数え(木年、魚年、石年、日年、先月年、後月年、剣年、矢年)、されにそのときの支配者の治世何年かでも数える。かくして、あの老人は、影燦将軍の四年、魚年の生まれということになるのだ(影燦は現在の将軍長谷川喜平の祖父に当たる)。

M.ガスコイン編安田均訳『タイタン』社会思想社