来た見た勝った

来た見た勝った

11 来た見た勝った ―― 動詞の完了形


veni, vidi, vici.

来た、見た、勝った。

    ―― スエトニウス『ローマ皇帝伝』

逸身喜一郎『ラテン語のはなし』大修館書店

11 来た見た勝った ―― 動詞の完了形

 ローマの将軍は国外で勝利をおさめると、凱旋式(これをラテン語で triumphus という)で自分の栄誉と功績とを誇示した。ユーリウス・カエサルは、「ポントスの戦い」の勝利のあとの凱旋式の際に勝利の迅速さを訴えんと、「我は(その地に)到着した、(ただちに事態を)把握した、(そして)勝利をおさめた」という内容を含意する、わずか3語からなる、完結をきわめた語句を掲げて行進した。

 この、どれも4つの文字からなる3つの単語 veni, vidi, vici は、古典ラテン語の発音で、「ウェーニー・ウィーディー・ウィーキー」となる。 v の音で一様に始まり、ついで、長母音・子音・語尾の長い i 、と、連なり方もみな同じである。素朴ではあるが音からして工夫の凝らされた表現といえよう(余談になるが、ウィンストン・チャーチルは、「近頃は妙な発音が学校で教えられるようになって、自分が憶えているように、ヴィーニー・ヴァイディー・ヴァイシーでなくなっった」と慨嘆している)。

 3つの単語 veni, vidi, vici は、


 wenio, video, vinco


 という動詞の完了形、厳密にいえば、「直説法・能動態・完了・一人称・単数」の形である。「来た、見た、勝った」の訳語が適切に示しているように、すべての行動はもはや終結している。それが現在形ではなく完了形たるゆえんである。

逸身喜一郎『ラテン語のはなし』大修館書店
ラテン語のはなし―通読できるラテン語文法

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