歴史上等

歴史上等

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歴史上等

 ですよ。と私はK編集に言った。新しい歴史小説雑誌をつくろうと画策中なのだがいいタイトルは他社に登録されていたりして、思案もいいのがなく、困っているとのことだったので、私はそう提案したのである。

歴史上等」。いいと思うんだが。戦国弱肉強食の時代、古い権威、既得権益者どもを覆しまくった推参なり是非もない英雄たちの群像。すごく上等だ。

 ウンコ座りして木刀を持って腹にさらしを巻いて死に装束の白の特攻服を着たニイちゃんたちが、

「オレら歴史上等っスから。織田信長だろーが諸葛孔明だろーが、ただイクだけっす」

 というようなカブキ心に満ち満ちた雑誌名である。むろん上着とズボンには、「歴史夜露死苦」とか刺繍してあり、腕には司馬遼命とか隆慶命とか工夫を凝らしたタトゥーが彫り込んであるわけだ。表紙にはスプレーで参上と書くべし。歴史は女が作る、ともいう。よってレディースだって上等だ。

「いいか、テメエら、これからの歴史小説はアタイたちがシキる。だから歴史上等! ヨロシク」

 というコピーまで考えてあったのだが、あえなくボツ。ボツ以前に冗談だと思われてしまったようだ。いいです。私はれきし人じゃないですから。

 でも、若い人の目を引いて、売らなきゃよくないと思いますし、どこの国でも歴史の変革期には、腹かっさばいてでも上等を貫くすげえ奴らがうようよしていたもので、織田信長なんかその最たるもの。

 いっちょ、月並みな「歴史ナントカ」でいくよりも徹底的にかぶいて「歴史上等」でいってほしかったと思うのは……私だけです。


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酒見賢一『陋巷に在り』2 新潮文庫