深きものども

深きものども

ルルイエの印

 さらに、クトゥルー神話大系が、キリスト教神話よりはるかな昔から存在するばかりか、中国の神話や人類の夜明けにも先行し、地球の遠隔地で変化することなく存続していることを示す証拠もあった――チベットのトゥチョ=トゥチョ人、アジア高原の忌わしき雪男、<深きものども>として知られる奇妙な水棲種族がクトゥルー神話を語りついでいるのだ。<深きものども>は両棲類のあいのこ、人間もどきと無尾両棲類が太古にかけあわさって生まれた種族、人間の突然変異にほかならなかった。

ダーレス 岩村訳『クトゥルー』1 青土社

ルルイエの印

 叔父シルヴァンの探究したものはアダの探究するものであった。それがいまやわたしの探究するものとなった。ルルイエの印を探し、さらに、海底に睡るもの、その呼び声をわたしが感じて応えた夢見るもの――大いなるクトゥルー――を見つけだすことだった。それがインスマス沖でないことをアダは確信していた。それを証明するために、アダは悪魔の暗礁沖の深海にわたしを連れてもう一度潜り、一九二八年の海底爆破の結果、廃墟と化している巨石建造物をわたしに見せた。かつて初期のマーシュ一族とフィリップス一族が<深きものども>と接触をつづけた場所だった。かつて大都市であったものの廃墟のなかさらに深く潜っていくと、わたしははじめて<深きものども>を目にして、心が恐怖にみたされた――人間の戯画のような蛙に似た姿をしており、蛙そっくりの大げさな動作で泳ぎ、ふくれあがった眼と両棲類の口で大胆に、怖れも見せずにわたしたちを見つめ、わたしたちを外界から来た同胞として認めていた。わたしたちはさらに深く潜り、もう一度大陸棚におりた。そこの破壊は徹底的だった。大いなるクトゥルーの帰還を防止することに一身をささげたごく少数の強情な者たちが、徹底的に破壊していた。

ダーレス 岩村訳『クトゥルー』1 青土社

ルルイエの印

 わたしたちが目にしたものを、たとえわずかでも信用してもらえるように記すには、どうすればいいのだろうか。ポナペ沖で<深きものども>が群がる大陸棚に存在する巨大都市群、もっとも巨大な都市、もっとも古い都市のことをどう記せばいいのか。わたしたちは何日間も水没した都市の塔や巨大な石壁のあいだ、光塔や丸屋根のあいだを進みつづけ、海底で森のように茂る植物のなかで迷いそうになったり、<深きものども>の暮しぶりを目にしたり、一応外見は八腕類に似ているが八腕類ではない奇妙な生物と仲よくなったり、鮫をはじめとする敵と戦ったりした。ときおりこんなことをしなければならなかったが、わたしたちは深海からわたしたちを呼ぶものに仕えるためにのみ生きているのだ。その大いなるクトゥルーがふたたび蘇る日まで、いったいどこで夢見ながら眠っているのか、知っている者は誰もいなかったが。

ダーレス 岩村訳『クトゥルー』1 青土社