混沌の渦

混沌の渦

第四章 混沌の渦

 この節では《混沌の渦》について説明しています。ここに言う《混沌の渦》とは、本の題名ではなく、魔法と大きく関わっている、この世界の外に存在している大きな力のことです。《混沌の渦》について紙面で簡単に説明することはむずかしいので、いくつかの切口から分けて説明することにします。読んでみて、《混沌の渦》をゲームでどう使うかはあなたが決めることで、この章ではそれが果たす役割について、少しほのめかすだけにとどめます。ここにある説明をよく読み、よく考えて、《混沌の渦》がどんなものかを理解してください。


 このゲームではすべてのものが、ほかのあらゆるものとつながっていて、あらゆる現象は「絶対法則」とでもいうようなもので統合されると仮定します。魔法はこの考えに基づいています。《混沌の渦》はこの「つなぎ」の部分です。それはこの世界の一部ではなく、外に存在しています。魔法使いが魔法をかけるとき、彼はまず、《混沌の渦》の力を呪文で呼び出します。《混沌の渦》は無秩序で危険な力です。そして、ゲームでは変化の要因としてはたらきます。《混沌の渦》の力が呪文で呼び出されると、現実に何かの変化が起こります。魔法使いが魔法に失敗するときは、《混沌の渦》とこの世界の間に満足な「橋」をかけることができなかったからです。魔法が決定的失敗をして、何か思いもよらないことがおこるときは、魔法使いが《混沌の渦》の力をコントロールできず、暴走させてしまったからなのです。瞬間的で無秩序な力の解放があり、魔法使いと《混沌の渦》とのつなぎ目は壊れてしまいます。


 《混沌の渦》を使うことでどんな影響があるでしょうか? くり返して魔法を使っていると、魔法使いは《混沌の渦》とのつなぎ目を作ることがますます簡単になり、それをより高い度合でコントロールして、より強力な魔法をかけられるようになります。しかし、くり返して魔法を使っていると、別のことがおこる可能性もあります。《混沌の渦》が現実を変化させる力は、それが生み出す混沌の力です、そのために、現実を何回も変化させると、現実はだんだん不安定になります。《混沌の渦》をさらに使うと、魔法使いが操作しているもののほかに、その周囲に変化を生じることがあります。歴史的に、奇妙な現象の例はたくさんあります。これらはその結果の一部と考えられるでしょう。空から動物の雨が降ってきたり、幽霊が出たり、何かの不吉な前兆が現れたり、天候が急変したり、変な声が聞こえたり――非常にたくさんの可能性があります。そのほかにも小さな無秩序な事件があります。ものが消えたり現れたり、何かが壊れたり、そのほか考えつくいろんなことです。


 《混沌の渦》が勝手に行動して、思いもよらないことがおこる可能性をゲームに取り入れることにすると、いつそうなるかを決める方法を知っておくべきでしょう。魔法使いが《混沌の渦》の力を呼び出すために、何か思いもよらないことが起こるかどうかを調べるためにサイコロを振ります。これが起こる基本の確率は一%です。これに魔法使いが試みる魔法の階級を加えて、サイコロを振り、調べます。思いもよらない出来事の確率は加えていきます。魔法使いが第一度の魔法をかけた後で、第二度の魔法をかけようとするときは、最初に二%、次に四%の確率で何かが起こります。《混沌の渦》の力を使うたびに、確率は増えていきます。魔法使いが《混沌の渦》の力を呼び出すのに成功し、何かの魔法がかかったときだけ、確率を増やし、サイコロを振って調べます。魔法に失敗したときは、確率も変わらないし、サイコロも振らなくてかまいません。


 もし不安定になっても、現実はじょじょに安定性を取り戻します。魔法の影響は、魔法をかけなおさないかぎり、一時間に一%の確率で減っていきます。また、それは局地的なものでもあります。魔法使いが何キロか旅して次の町に行けば、思いもよらない出来事が起こる確率は少なくなります。一キロ移動するごとに一%ずつ少なくなります。したがって、魔法使いが街道を旅し、二、三日ごとに魔法をかけても、思いもよらない出来事が起こることはほとんどないでしょう。一方、魔法使いが一つの場所でたくさん魔法をかけると、ほとんど確実に、現実を不安定にし、いわば現実世界に「ひび」をいれることになります。この不安定はどの魔法使いにも同じです。ある魔法使いがたくさん魔法をかけて、思いもよらない出来事の確率を五〇%にしていれば、別の魔法使いが魔法をかけたときもその確率から始めます。


 この《混沌の渦》の影響を使うか使わないかは完全に自由です。もし、使うことにしたら、レフリーはそのことをプレイヤーに説明すべきでしょう。レフリーは何か変なことが起こったら、何が起こったかも決めます。《混沌の渦》が思いもよらない出来事を引き起こしたときに、事件が連続して起こるというルールにしてもかまいません。サイコロを振り、思いもよらない出来事が起こったとき、レフリーは同じ確率でもう一度サイコロを振り、さらに別の事件が起こったかどうか調べることにすればよいでしょう。この手順は、サイコロを振って「失敗」するまで、つまり、事件が起こり続けているかぎりくり返されます。起こる事件は魔法の複雑さを反映すべきです。簡単な魔法なら、事件は小さいものでしょうが、難しい魔法だと、大事件を引き起こすでしょう。


 もう一つ、《混沌の渦》について、別の見方をしてみましょう。ごくまれに、キャラクターは自分自身を《混沌の渦》に放りこもうとするかもしれません。この結果はとても予測できませんが、普通は非常に極端な、恐ろしいものになります。《混沌の渦》の「生の」エネルギーにさらされて、キャラクターは傷つくかもしれません。そして、回復にはそれから数週間、あるいは数か月かかるかもしれません。《混沌の渦》は中に入ってきたものを受けつけず、現実の世界に放り戻すでしょう。しかし、大切なことは、キャラクターはいつも出発したところに帰ってこられるというわけではありません。たとえば、一六世紀のイギリスで《混沌の渦》に飛びこんだキャラクターは、現代のソ連や古代エジプトに戻ってくるかもしれません。《混沌の渦》は人間を現実のどの時代のどの場所にでも投げ返す可能性があるのです。


 《混沌の渦》は、何よりも、生きている実体なのです。それはあなたの世界で成長し、変化するでしょう。キャラクターは長時間、《混沌の渦》の中を旅することはできません(第五度の魔法として《混沌の渦》に接触しようとすることはできます)。そして、一度《混沌の渦》の中を旅したら、二度と入りたいとは思わないでしょう。ひょっとしたら、何かの探索をするためになんどもそれを使うかもしれません。選ぶのはあなたです。

A.スコット『混沌の渦』社会思想社

「『おじいちゃん、これなあに?』

 大きな安楽椅子にうずくまるようにして眠っていた老人の足元から、賢そうな目をした子供が声をかけた。

『字がいっぱい。僕には読めないや』

安っぽい装丁の表紙をめくると細かな文字が広がっている。

 『そう、それはね……』

 暗くて恐ろしげな絵に、子供はすっかり心を奪われている。

 『それは思い出の本じゃよ、いまでは誰も思い出さない。じゃがおじいちゃんは覚えているぞ。その中にはおじいちゃんの思い出がしまってあるんじゃよ……』

 老人は目を閉じ、静かな吐息をもらした。

 『そう、あれは……』

すっかりすり切れた小さな本の表紙には『混沌の渦』という文字が輝いていた」

 (栃木県小山市・「なんで混沌の渦をやらんのだ」庄×司利章×)

『ウォーロック』53 社会思想社

 (伏せ字は母里による)

ウォーロック 第53号

ウォーロック 第53号