茫然自失の

茫然自失の

 酒見賢一『陋巷に在り』新潮文庫 シリーズのカバー裏表紙にある本の内容紹介は、四字熟語を駆使した、並べてみると面妖な文章です。第四巻からの傾向ですので書く人がここで変わったのだと思いますが、「急転直下」「興味津々」「茫然自失」なんだか無理しているような気がしないでもありません。とりあえず引き写しておきます。


 8巻はいま行方不明。


聡明で強い呪術の能力を持ちながら、出世の野心なく、貧しい人々の住む陋巷に住み続けた顔回。孔子の最愛の弟子である彼は師に迫る様々な魑魅魍魎や政敵と戦うサイコ・ソルジャーだった……息づまる呪術と呪術の暗闘、政敵陽虎との闘争、影で孔子を護る巫儒の一族。論語に語られた逸話や人物を操りつつ、大胆な発想で謎に包まれた孔子の生涯を描く壮大な歴史長編、第一部。

酒見賢一『陋巷に在り』新潮文庫

儒者の抵抗によって思わぬ苦戦を強いられた陽虎は、太古の鬼神・饕餮を召喚。またたくまに儒者の屍の山が築かれていった。その凄まじさに孔子の弟子たちは恐れをなすが、一人、顔回だけは落ちついていた……。土俗的な術を使う政敵との熾烈な闘い、媚術で弟子を次々に骨抜きにする謎の美女の登場、更に許嫁・妤と顔回の恋の行方は……? ますます白熱する大河歴史小説、待望の第二巻。

酒見賢一『陋巷に在り』2新潮文庫

孔子に対抗して塾をかまえ、急速に拡大していく謎の人物、少正卯。その屋敷に住む妖艶な美女、子蓉は恐るべき性魔術・媚術の使い手だった。練達の儒者である子路をはじめ、孔子の弟子が次々と子蓉の術の虜となり、ついに魔の手は顔回へと及んだ。透徹した精神と類稀な呪術を備えた顔回さえも、子蓉の掌中に落ちてしまうのか? いよいよ佳境に突入する大河娯楽巨編、第三巻。

酒見賢一『陋巷に在り』3新潮文庫

孔子一門をねらいうちにしてゆく妖艶な性魔術使い子蓉は、唯一術をやぶられた顔回を籠絡すべく陋巷を訪れ、ついに顔回の許嫁の美少女妤に出会う。子蓉から鏡を貰った妤だが、そこには恐るべき媚術が施されていた……。一方、三都の連続攻撃を密かに企てた孔子は、協力を申し出た政敵少正卯の真意を測りかねていた――。想像を絶する凄まじい死闘が繰り広げられる急転直下の第四巻。

酒見賢一『陋巷に在り』4新潮文庫

とうとう業師五六まで取り込まれてしまった……。媚術に操られた美少女妤は、厳重な見張りをものともせず、次第に国を揺るがしかねない勢力を形成してゆく。一方、孔子の使者として費城に赴いた公冶長は、そこで意外な裏切り者と対面した。少正卯一味に攪乱される孔子一族の危機。春秋の世を戦国の世に踏み込ませていったのは誰か――。東洋の房中医学にも分け入る、興味津々の第5巻。

酒見賢一『陋巷に在り』5新潮文庫

子蓉の媚術に操られた妤を救出し、暴動鎮圧に成功した顔回。しかし、妤の心身の消耗は著しく、瀕死の状態となっていた。一方、悪悦の姦計により理性を失った費城の公山不狃は、籠城策を一転、怒りに任せ魯城を奇襲する。警備手薄の魯城はあっけなく費兵の侵入を許し、孔子らの命はまさに風前の灯……。策謀と激情が交錯し、空前極まる奇襲戦の描写が戦慄を誘う、茫然自失の第6巻。

酒見賢一『陋巷に在り』6新潮文庫

費の反乱を危機一髪のところで鎮圧した孔子は、少正卯一派の実力を思い知らされていた。そこに突然、妖女・子蓉が訪れ、孔子との面会を申し込む。その子蓉の媚術により瀕死となった美少女・妤は、顔氏の里・尼丘に運ばれ、南方を遍歴して医術をきわめった医鶂の診察を受ける。医鶂は、医の力によって妤を救えると断言するが……。名医の登場で新たな生彩を放つ、一触即発の第7巻。

酒見賢一『陋巷に在り』7新潮文庫

数々の恐怖と苦難の試練の果てに、妤のもとにたどりついた孔子最愛の弟子・顔回。人間の生命力を吸い上げ、精神を窒息させる危険な場所・冥界。一刻も早い脱出が必要だ! 妖女・子蓉と妤、そして顔回。冥界の掟に反し、三人そろっての帰還にあくまで固執する顔回に、子蓉は、三人を二人にし、二人を一人とする、驚くべき術を提案する。冥界の規則さえも欺く、奇想天外の第九巻。

酒見賢一『陋巷に在り』9新潮文庫

尼山の祠に奉納する舞の舞手に選ばれた尼山顔氏の長の末娘顔徴在。激しく降りしきる雷雨の中、無我の境地で舞い続ける徴在に、激しい光が下り立った。彼女を包み込んだ尼山の神。その神が彼女に告げたのは、一生一人であることを運命づけられた彼女が、「三年後、子を生むことになる」という驚くべき「命」だった……。孔子出生の秘密がいよいよ明らかになる、空前絶後の第10巻。

酒見賢一『陋巷に在り』10新潮文庫

魯の国の政権安定のために孔子が企てた三都毀壊策。その最終段階の成城討伐は、成の城宰・公斂處父の抵抗にあい、膠着状態におちいっていた。そこで、狂巫に身をやつした悪悦の使嗾をうけた處父は、孔子の動揺を誘うため、その故郷・尼丘襲撃に兵を向わせる。そして、その頃、子蓉も何ものかに誘われるように、尼丘を目指していた。孔子の故郷に危機が迫る、危急存亡の第十一巻。

酒見賢一『陋巷に在り』11新潮文庫

孔子が魯の政権安定のために計画した三都毀壊の最終策、成城破壊は成兵の激しい抵抗にあい、一進一退の状況に陥る。城宰の公斂處父が孔子を霍乱するため、その故郷・尼丘に派遣し成兵たち。そのまえには顔儒たちが立ちはだかる。そして、尼山の神に受け入れられた子蓉は、その祠の前で最期の舞を踊りながら、邑に突入した成兵たちを次々と倒していく……。愛別離苦の第十二巻。

酒見賢一『陋巷に在り』12新潮文庫