誰がために鐘は鳴る

誰がために鐘は鳴る

 なんぴとも一島嶼にてはあらず

 なんぴともみずからにして全きはなし

 ひとはみな大地(くが)の一塊(ひとくれ)

 本土のひとひら そのひとひらの土塊(つちくれ)を

 波のきたりて洗いゆけば

 洗われしだけ欧州の土の失せるは

 さながらに岬の失せるなり

 汝(な)が友どちや汝(なれ)みずからの荘園(その)の失せるなり

 なんぴとのみまかりゆくもこれに似て

 みずからを殺(そ)ぐにひとし

 そはわれままた人類の一部なれば

 ゆえに問うなかれ

 誰がために鐘は鳴るやと

 そは汝(な)がために鳴るなれば

              ジョン・ダン*1

ヘミングウェイ 大久保康夫訳『誰がために鐘は鳴る』新潮文庫

*1:ジョン・ダン(1573―1631)イギリスの詩人・神学者。カトリック教徒として育てられたが、のち英国教会に改宗した。一六一五年英国教会の牧師となり、国王チャールズ一世の前でもしばしば説教した。のち聖パウロ大寺院の司祭長となり、最後までこの職にあった。諷刺詩・書簡詩・挽歌など多くの作品を残し、その思想と学識、情熱とウイットを駆使して、いわゆる形而上派詩人の第一人者としてT・S・エリオットやイェーツなどにまで大きな影響をあたえた。著書『世界の解剖』『霊魂の進歩』など。

* はてなダイアリーキーワード:誰がために鐘は鳴る