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78
拷問人ボリスの死体を踏み越え、「鋼鉄の処女」に近づく。なかから悲痛なうめき声がきこえるが、これはつまり、なかに閉じこめられた人間がまだ生きている証拠だ(あたりまえだが)。
ボリスは、見かけのわりにユーモアのある奴だったらしく、「鋼鉄の処女」に名前をつけていたようだ。ふたに打ちつけられた真鍮の額には、
『ハーイ! わたし、鋼鉄の処女、ルーシーよ』
「ばかなものを読んどらんで、早く余をここから出さんか」うつろな声がなかから響いてきた。
だが、ふたを開けるのは口でいうほどかんたんではなかった。ふたはダイヤル錠でしっかり閉められているのだ!
「早く出してくれえ! おーい、ここから出さんか! 何をぼやぼやしておる!」
声が必死になってきた。
J・H・ブレナン著高橋聡訳『宇宙幻獣の呪い』二見書房
宇宙幻獣の呪い (サラブレッド・ブックス―ドラゴンファンタジー)