間違い

間違い

間違いについて

 翻訳に限らず、こういう自前の文章を書いていてもときどきひどい間違いをする。ぼくはどちらかというとデータを駆使して論陣をはってというタイプのもの書きではないし、モデル小説やノン・フィクションも書かないし、それでとくに誰かを傷つけるということもないので、たいていの間違いや事実誤認は笑ってごまかしてしまう。

 先日昭島市の岡村さんという方から、村上さんの小説の中に「フォルクスワーゲンのラジエーター」という表現が出てくるが、これはおかしいのではないかという投書が某誌に載っていましたけれど御存知ですか、という手紙を頂いた。僕は自動車のことはよく知らないのだけれど、人にきいてみるとたしかにVW ビートルにはラジエーターはないらしい。間違いである。

 しかしそれで僕が平身低頭して謝るかというと、そんなことはなくて、やはり笑ってごまかしてしまう。なぜならこれは小説だからである。小説の世界にあっては火星人が空を飛んでも、象が縮んで手のひらにのっても、VW ビートルにラジエーターがついていても、ベートーヴェンが第十一番交響曲を作曲していても、それは一向に差し支えないのである。逆の言い方をすれば、「あ、そうか、これはVW ビートルにラジエーターがついている世界の物語なんだ!」と思って小説を読んでいただけると、僕はとても嬉しいです。

村上春樹『村上朝日堂の逆襲』新潮文庫
村上朝日堂の逆襲 (新潮文庫)

村上朝日堂の逆襲 (新潮文庫)


炎燃の熱血マンガ講座

Lesson 8 話にムリが出てきたら

「もし、じぶんのマンガの中に設定のムリとか――」

「自分でもわかるあきらかなウソを発見してしまったら…」

「たとえばスポーツのルールとか、」

「建物のある場所や形とか――」

「あわーっ、やっちゃった――っ!!」

「とかいう気持ちになったら!!」

「訂正する前に、」

「信じこめ!」

「――そして、世の中のほうがそう変わるように祈れ!!」

「人間が本気で信じこめば、」

「必ず現実に影響が出る!!」

「逆に本当に現実化してしまったために描けなくなるものもある!!」

「それはそれで困ったことだがしかたがない!!」

「とにかく現在(いま)の現実にまどわされず自信をもってペンに魂をこめろ!」

Lesson 8 終了

島本和彦『燃えよペン』小学館
燃えよペン (サンデーGXコミックス)

燃えよペン (サンデーGXコミックス)