蜀犬 日に吠ゆ

1901-01-03

[][]一月三日 人生の唯一の、道理にかなった目標は はてなブックマーク - 一月三日 人生の唯一の、道理にかなった目標は - 蜀犬 日に吠ゆ

眠られぬ夜のために〈第1部〉 (岩波文庫)

眠られぬ夜のために〈第1部〉 (岩波文庫)

一月三日

 人生の唯一の、道理にかなった目標は、地上に神の国を、つまり、不和と生存競争の国ではなく、平和と愛の国を築くことである。この事業に協力するかぎりにおいて、われわれの生活は目的と価値とを得ることになる。ひとはだれでも、活動することや苦難に堪えることで、この事業に参加することができる。同胞教会讃美歌六五二番、六五六番、七八五番。


 たえずなにか有益な仕事をし、あせったり、心配したりしないこと。また、われわれが出会う事柄やわれわれの気分を、つねにみずから支配し、決してそれらに支配されないこと。これが、いつも年の初めにいだくべき正しい生活のプログラムである。しかしこのプログラムが実行できるのは、われわれが万物の主と親密に堅く結びつき、その導きに無条件に従おうと決心する場合にかぎる。そうでなければ、どんなに賢いどんなに強い人でも、周りの人間や状況にもてあそばれて、たえずそれに抵抗して身を護るだけが関の山となる。こうして、年と共にかさむ、ささいな、しかも骨の折れる難事のために、人生はひとつの重荷となり、ついにはその重荷の下にひしがれて、まちがいなく、そしてたいていは、悲惨な破滅に陥るのである。


 信仰をもつ者でも、往々中途はんぱな道を歩くことがある。なるほど、一般的には神の導きを願っているが、ある事柄、たとえば結婚、社交、政治、投機などおよそ金銭上の問題については、自分だけで考えたり行動する領分を持ち、そこでは、神の助言を求めないのはもちろん、神に覗かれることすらいやがる。なぜなら、彼らは自分の考え方が誤っていて、がんらい放棄しなければならないものだということを自ら知っているからだ。だが、彼らは、世間の人に劣らず、これらのことで思いわずらい、自分をも他人をも苦しめ、また駆り立てる。しかも、そのために不幸におちいった時だけ、ふたたび神の助けを呼び求める。それはたしかに、この場合彼らがなしうる最上のことにちがいない。けれども神が、まずしばらくの間、彼らに自分勝手な行いの結果をはっきり思い知らせたとしても、なんの不思議もない。


 あまり働きすぎてはならない。また一般に、秩序ある暮し方をすれば、その必要もない。一方、適度な仕事は、力を維持する最上の方法であり、また非活動的な力やたるんだ力を救う唯一の、無害な刺激剤でもある。

ヒルティ著 草間平作・大和邦太郎訳『眠られぬ夜のために』第一部 岩波文庫