蜀犬 日に吠ゆ

1901-01-04

[][]一月四日 あなたが「どうしたらすばらしい、愉快なことを楽しめるか」を問うかわりに はてなブックマーク - 一月四日 あなたが「どうしたらすばらしい、愉快なことを楽しめるか」を問うかわりに - 蜀犬 日に吠ゆ

眠られぬ夜のために〈第1部〉 (岩波文庫)

眠られぬ夜のために〈第1部〉 (岩波文庫)

一月四日

 あなたが(今おそらくそうであるように)「どうしたらすばらしい、愉快なことが楽しめるか」を問うかわりに、「今どんな善いこと、正しいことをなし得るか」をたずね、あるいは、この究極の目的のためにどのように自分の状態を改めたらよいかを絶えず問うことに、あなたの全思考力を向けているならば――あなたが住むこの世界について、全く違った、より満足すべき観念が得られるであろう。そして、およそ「生きる」とはどういうことであるかが、初めて本当にわかるであろう。

 そうなると、さしあたり、善を行う機会さえあれば(この機会がないことはまれだ)、あなたの生活がいくぶん苦しかろうと楽であろうと、また、あなたが健康であろうと病気であろうと、そんなことはこれまでより、ずっとどうでもよくなるだろう。ところが、これとちがった人生観をいだくなら、不満、心労、恐怖、総じて不和が、内にも外にも全く避けがたくなるであろう。これは特別によい身分の人でもそうであり、ましてそれ以外の者にあってはいうまでもない。

 この二つの人生観こそ、宗教と階級にかかわりなく、すべての現代人を分かつ真実の大きな区別である。これにくらべれば、あらゆる他の区別はほとんど意味がない。

 初めに述べた正しい考えの人びとの味方になりなさい。その人びとがどんな宗教、どんな哲学を持つか、またどんな階級に属するかは、どうでもよい。同胞教会讃美歌三七〇番、三七二番。

ヒルティ著 草間平作・大和邦太郎訳『眠られぬ夜のために』第一部 岩波文庫