蜀犬 日に吠ゆ

1901-01-16

[][]一月十六日 神の恩寵にあずかっている事実は、 はてなブックマーク - 一月十六日 神の恩寵にあずかっている事実は、 - 蜀犬 日に吠ゆ

眠られぬ夜のために〈第1部〉 (岩波文庫)

眠られぬ夜のために〈第1部〉 (岩波文庫)

一月十六日

 神の恩寵にあずかっている事実は、普通、次の二つのことではっきり認められる。まず第一に、往々全く突然、なんらの外的原因もなく現われてくる超地上的な喜びによって。しかし一層たしかなしるしは、そういう人が、エゴイズムと結びついた事柄では決して成功せず(他の多くの人たちはいつもうまくいくのに)、むしろ困難な事、常ならぬ事では不思議と立派に、しかもたやすく成功することである。

 ともあれ、自分がこの恩寵にあずかっているかどうかを、反省するのは無駄なことである。だれでもそれを心から願い、他の人生の宝を一切なげうってそれを得ようと決意する人は、それ以外の犠牲や準備なしにも、恩寵を受けることができる。いや、そういう人はすでにそれを受けているのであって、やがて上に述べたしるしも現われ、まもなく疑う余地がないほどになる。

ヒルティ著 草間平作・大和邦太郎訳『眠られぬ夜のために』第一部 岩波文庫