蜀犬 日に吠ゆ

1901-01-30

[][]一月三十日 愛というのは はてなブックマーク - 一月三十日 愛というのは - 蜀犬 日に吠ゆ

眠られぬ夜のために〈第1部〉 (岩波文庫)

眠られぬ夜のために〈第1部〉 (岩波文庫)

一月三十日

 愛というのは、人をあざむきがちな、あるいは少なくともしばしば実行しがたい言葉である。人間に対しては同情が、神に対しては信頼と感謝が正しい感情である。すべての人間をほんとうに愛したいと思っても、それはなかなかできないことであり、ただ大きな幻滅と、最後にはペシミズムに陥るだけである。だれにも親切で、だれにも同情をよせ、決して憎しみや恐怖や怒りを抱かないということならば、それはできよう。日ごろ「キリスト教的愛」などとやたらに言いたがる人たちにかぎって、かえってそれのできないことが多いものだ。

 愛のない人としきりに交わるのは、魂をそこなうものである。だから、やむをえない場合は、むしろ交際をへらすか、それとも全くそれを絶つべきである。

 同情心が欠けているということは、女性の場合、重大な性格上の特徴となる。そういう特徴を認めたらその人に用心するがいい。また人間に対する過度な愛は、女性にとって最ものがれがたい落とし穴である。

ヒルティ著 草間平作・大和邦太郎訳『眠られぬ夜のために』第一部 岩波文庫