蜀犬 日に吠ゆ

1901-02-07

[][]二月七日 ある文筆家は正当にも はてなブックマーク - 二月七日 ある文筆家は正当にも - 蜀犬 日に吠ゆ

眠られぬ夜のために〈第1部〉 (岩波文庫)

眠られぬ夜のために〈第1部〉 (岩波文庫)

二月七日

 ある文筆家は正当にもこう言っている、本当に大切なのは、正しい道にあることだけである。そうすれば、ほかのすべてのものはおのずから与えられる、と。

 またこうもいえるだろう。福音書が聖霊と呼んでいるものを、自分の生活のなかに招き入れることだけが重要である。そうすれば、この霊が、それ以上のことは残らず果してくれるのだ、と。

 そこで、されに一歩をすすめてこうも言えよう、しばらく聖書以外のすべての宗教書を閉じてしまいなさい。また、聖書のなかでもキリストの言葉と行いのほかは、すべてさし措きなさい。その他のものは、魂の浄福を得るのに必要ではない、もっとも、ときには信仰の有益な支えや刺戟となることはあるが、と。

 福音がただ働く人たちに対してだけ十分な効果を現すという事実は、注目すべきことである。福音は働く人にとってはたえず元気を与えるものであるが、これに反して働かない人は(怠け者の聖職者も)福音になにか別のものを添えなければならない、例えば、たえまない集会や祝い事や教会の形だけの行事など、あらゆる種類のものが必要になる。こんな事柄は、働く人には、なければないで済ますことができるものだ。


  恩寵の選び

 あなたのみ業のためにこの私を

 永遠より選び定められたお方よ、

 そのしるしとして私に力をお授け下さい。

 心いさんで働く者となして下さい。


 あなたの命令を進んで果すようお導き下さい、

 願わくば、あなたの大いなるみ業がなしとげられんことを。

 ただ信仰に生きる者のみが

 かくも美しく重き運命(さだめ)を負うことができます。

ヒルティ著 草間平作・大和邦太郎訳『眠られぬ夜のために』第一部 岩波文庫