蜀犬 日に吠ゆ

1901-02-08

[][]二月八日 大多数の人間は はてなブックマーク - 二月八日 大多数の人間は - 蜀犬 日に吠ゆ

眠られぬ夜のために〈第1部〉 (岩波文庫)

眠られぬ夜のために〈第1部〉 (岩波文庫)

二月八日

 大多数の人間は、働くことをたえず避け、自分の労働の結果の代りに、資本の蓄積や縁故関係や気楽な社会的地位など、つまり自分のためになされる他人の努力によって、その埋め合せをしようとする。しかしその場合、彼らは、自分で働くよりも仕合せになるわけではなく、むしろはるかに人に従属することになる。いちはやくこの道理を十分にさとって、みずからすすんで働く生活を選び、それによってこの世における唯一の自由な人間となるものは、きわめて少ない。

 自分の生活からすべて無用なものを遠ざけ始めると――なにかひとかどのことをやろうとすれば、ぜひともこのことから始めなければならない――そのあとに、ただ仕事で埋めるほかないような、生活の空白が生じる。多くの人はこのことを本能的に感じているが、彼らは仕事に熱意を持ちえないので、あるいは持ちたくないので、この第一歩をふみ出すことをおそれて、むしろ世間なみの昔ながらの道にとどまっている。

ヒルティ著 草間平作・大和邦太郎訳『眠られぬ夜のために』第一部 岩波文庫