蜀犬 日に吠ゆ

1901-02-13

[][]二月十三日 なにごとが起ろうと はてなブックマーク - 二月十三日 なにごとが起ろうと - 蜀犬 日に吠ゆ

眠られぬ夜のために〈第1部〉 (岩波文庫)

眠られぬ夜のために〈第1部〉 (岩波文庫)

二月十三日 なにごとが起ころうと

 なにごとが起ろうと、すべては神のみ手から授けられるものと信じ、もはやいろいろと思いわずらうことなく、ただ開いた門を通って行くならば、その人の人生はすでに幸福になり始めたのである。それまでは、大きな辛苦ばかりがあい次いで起り、その間に時どきやすらぎの期間はあっても、それさえたいていは自己欺瞞と結びついている。

 「神のかたわらにあること」、すなわち人間の魂に神の霊が「宿る」こと、これこそ本当に魂の幸福となるのである。神の霊の宿りは、それをこの世のあらゆる財宝にまして重んじるならば、まだきわめて不完全な魂にも起りうるが、そういう決意がなければ、もっと完全な魂にもそのことは起らない。前者はこれによって徐々に、そして確実に浄められるが、後者はすこしも進歩することがない。

 われわれも同じく、たとえより高い天分の持ち主であっても結局はわれわれに比較的無関心な友人よりも、むしろ不完全な人間であっても誠実にわれわれに心をゆだねる友人の方を、はるかに多く愛する。そしてこの友のためならなんでも喜んでしてやりたいが、前者に対してはそういう気になれない。

ヒルティ著 草間平作・大和邦太郎訳『眠られぬ夜のために』第一部 岩波文庫