蜀犬 日に吠ゆ

1901-02-26

[][]二月二十六日 人間のあらゆる性質のなかで、最良のものは はてなブックマーク - 二月二十六日 人間のあらゆる性質のなかで、最良のものは - 蜀犬 日に吠ゆ

眠られぬ夜のために〈第1部〉 (岩波文庫)

眠られぬ夜のために〈第1部〉 (岩波文庫)

 人間のあらゆる性質のなかで、最良のものは誠実である。この性質は、ほかのどんな性質の不足をも補うことができるが、この性質が欠けているとき、それをほかのもので補うわけにはいかない。

 ところが残念ながら、この性質は人間にはむしろまれで、かえって動物の方にしばしば見られる。したがって、この大切な点で、人間は実は動物にまさっているわけではない。もし他のどんな点よりもこのことで人間がまさっているとすれば、すべての生物の段階的進化の説の成立を、私も承認するであろうに。

 また感謝するということでも、一般的にいって、人間は他の高等動物よりもかえって劣っている。だから、他人の感謝を当てにしないがよい。忘恩の一番ありふれた形は、相手の人を訪問したり、その他の仕方で相手の恩を「表彰」することで、感謝の義務は終えられたと思うことである。例えば君主国では勲章を授与することもそうであるが、これによって感謝の関係が逆にさえなってしまう。われわれは、このようなあまりにも安価な返済はできるだけおことわりして、むしろ債権者のままでいるべきである。

ヒルティ著 草間平作・大和邦太郎訳『眠られぬ夜のために』第一部 岩波文庫