蜀犬 日に吠ゆ

1901-07-24

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眠られぬ夜のために〈第1部〉 (岩波文庫)

眠られぬ夜のために〈第1部〉 (岩波文庫)

 われわれの内的生活がある地点にまで到達すると、自分が全力を尽しても結局無効だということをあまりに強く信じこみ、そのため誤った静寂主義や宿命論におちいる大きな危険に晒されることがある。

 われわれは何をなすべきか、またそれをいかになすかについて、決して無頓着であってはならない。いや、むしろわれわれはすべての勤勉と才能とを真剣に活用しなくてはならない。ただし、野心や所有欲からではなくて、義務感と神への愛から、それをしなければならない。そして、事の成否は、神に委ねるべきである。

 そうすれば、何も吹聴などしなくても、万事がうまくはかどる。それでもなお犯す外的失敗でさえ、われわれに有益なものに変わる。もしこのことが信じられないなら、自分でためしてみるがよい。

 どんな人の生活でも、たとえ預言者や使徒の場合でも、時おり、深い意気消沈におそわれずにはすまない。「主よ、今わたしの命を取ってください。わたしは先祖にまさる者ではありません」(列王記上一九の四)。これは、きっとだれでもその生涯の暗い時に口にしてきた言葉である。このような無気力がどこから来るのか、われわれは多くの場合それを知らない。けれども、これに屈服してはならないことだけは、いつも知っている。この世に神の国を築くための戦いにおいて降伏する者は、つねに裏切り者である。あなたの義務を行いなさい。できるならば楽しい気分で。できなければ、そうした気分なしでもよい。この方が一層ほむべきことであり、一層大きな実りがある。ダンテ『神曲』地獄篇第九歌七―一〇行。

ヒルティ著 草間平作・大和邦太郎訳『眠られぬ夜のために』第一部 岩波文庫