蜀犬 日に吠ゆ

1901-08-18

[][]八月十八日 天国と地獄 はてなブックマーク - 八月十八日 天国と地獄 - 蜀犬 日に吠ゆ

眠られぬ夜のために〈第1部〉 (岩波文庫)

眠られぬ夜のために〈第1部〉 (岩波文庫)

八月十八日

 天国と地獄。多くの人びとは、彼らがこの世を去るときの精神状態からいって、われわれがもっぱら理性的に想像しうる天国、すなわち、ごまかしのきかない善人ばかりの社会に対しては、疑いもなくふさわしくない人たちである。あなたは天国に入るのを切に願っているかどうか、自分で考えてみればすぐ分る。そしてその通りにあなたの審(さば)きもなされるだろう。したがって、めいめいが自分の行くべき場所をおそらくみずから定めるわけであろう。

 しかし、同様にまた、多くの人びとはやはり地獄に行くにはふさわしくない、すなわち、意識的な、後悔を知らぬ悪人たちや同様に自覚をもってすべての善に絶対的に敵対する人たちのみの社会に、彼らが適しないことも確かである。このことはまだしもわれわれの力強い慰めといえるであろう。すでにこの世において、そのような悪人どもは善人のそばにいたたまれないで、できるだけ善人の仲間入りすることを避けている。もしも一人でも善に心をよせている者が地獄に入ってきたとしたら、そして地獄のやからがその人を誘惑する望みがないとすれば、悪人どもは彼と共にいるよりは、むしろ地獄をあけわたして立ち去るであろう。

 こういうことをすべて十分に考慮すれば、われわれの未来の運命についてもはっきり分るであろう。そして、それ以上のどんな教義もいらなくなるであろう。

 ダンテ『神曲』地獄篇第八歌・第九歌。

ヒルティ著 草間平作・大和邦太郎訳『眠られぬ夜のために』第一部 岩波文庫