蜀犬 日に吠ゆ

1901-08-20

[][]八月二十日 職業として説教すること はてなブックマーク - 八月二十日 職業として説教すること - 蜀犬 日に吠ゆ

眠られぬ夜のために〈第1部〉 (岩波文庫)

眠られぬ夜のために〈第1部〉 (岩波文庫)

八月二十日

 職業として説教することがとくに困難なわけは、個々の人間の魂の内部ではたらく神のみ業が段階的なものであって、長州の信仰の段階が説教者のそれと必ずしも一致しない、いや、それどころか、めったに一致することがないからである。

 たとえそうであっても、説教者はそんなことには頓着なく、自分が持っている一番よいものを与えるのが最上の方法である。なぜなら、彼の考え方が誠実であり、彼の仕事がおよそ神の計らいによるもので、自分の虚栄心から出たものでなく、したがってごまかしの仕事でなければ、それぞれの段階が少なくとも他の段階のいくらかを含んでいるので、相手に理解してもらうことができるからである。信仰をもった説教者でありながら聞き手に理解されない人は、福音という上等のぶどう酒がきたない樽を通して流れているわけで、実はまだ説教などする資格が全くない人にほかならない。

ヒルティ著 草間平作・大和邦太郎訳『眠られぬ夜のために』第一部 岩波文庫