蜀犬 日に吠ゆ

1901-08-31

[][]八月三十一日 永遠の真理の はてなブックマーク - 八月三十一日 永遠の真理の - 蜀犬 日に吠ゆ

眠られぬ夜のために〈第1部〉 (岩波文庫)

眠られぬ夜のために〈第1部〉 (岩波文庫)

 永遠の真理の新しい、実りゆたかな種子がわれわれの心に落ちて、そこに根をおろすことができるには、その前に不安という鋭い、深く切り込む犁の刃が、われわれの心のあとからあとから生じる硬い殻を、いくども切り開かねばならない。このような過程を経ていないと、実際に人生の根底にある本当に真実なものに対していつまでも無感覚でいるであろう。

 われわれは多くの人生経験をつむことによって、全く苦難のない生活をもはや願わないという心境に達する。これが「永遠の平安の状態」である。この地上では、苦難こそがわれわれの悪い性質からわれわれを守ってくれる、われわれの変りない番人であり、そのうえ、苦難がなければさらに堪えがたいであろう生活の単調さをも破ってこれを活気づけてくれるものである。


   荒野(あらの)よりの脱出

     (申命記二の七)

  憎しみ合うのはもうたくさんだ、

  さあ、これからは愛したいものだ。

  私の心よ、残っている

  最後の重荷をなげすてるがよい。


  わたしたちは、もみ殻にすぎない

  色とりどりの地上の宝にあきはてた。

  主よ、これからは、あなたのみ心と

  真実(まこと)とが私たちをよろこばせますように。


  私たちはさまざまな形姿(すがた)のなかに

  幸福と心のふるさととを求めてきた。

  やっと見つけたこの貴い真珠を

  今はいつまでも持ちつづけたい。


  憎しみ合うのはもうたくさんだ、

  さあ、これからは愛したいものだ。

  久しい以前に決意したことを、

  いまこそ実行にうつすがよい。

ヒルティ著 草間平作・大和邦太郎訳『眠られぬ夜のために』第一部 岩波文庫