蜀犬 日に吠ゆ

1901-09-09

[][]九月九日 賢明な人たちはかえって はてなブックマーク - 九月九日 賢明な人たちはかえって - 蜀犬 日に吠ゆ

眠られぬ夜のために〈第1部〉 (岩波文庫)

眠られぬ夜のために〈第1部〉 (岩波文庫)

 賢明な人たちはかえって、人間軽蔑という限りなく憂うつな、自分の魂をひどく損なう感情にとらわれやすいが、それを救ってくれるのは、ただあわれみの心だけである。しかし、このあわれみの心はいわば第六感のようなもので、根本的にはただ厳しい苦難を通じてより善い人びと心に生じる感情であって――みずから犠牲を払わず、他人の助けにもならない弱々しい同情とはちがうのである。もちろん世間には、自分の苦しみのために他人に対して一層冷酷に、無情になってしまう人たちもいる。彼らの考えによれば、他人と自分と同じようにもっと苦しむべきだというのである。

 避けられるかぎり、どんな生きものをも、なるだけ苦しめないように、本気に心がけねばならない。この方が、われわれが現実に行っている行っている慈善行為よりも、むしろ価値がある。

ヒルティ著 草間平作・大和邦太郎訳『眠られぬ夜のために』第一部 岩波文庫