蜀犬 日に吠ゆ

1901-09-10

[][]九月十日 感覚的な生活から はてなブックマーク - 九月十日 感覚的な生活から - 蜀犬 日に吠ゆ

眠られぬ夜のために〈第1部〉 (岩波文庫)

眠られぬ夜のために〈第1部〉 (岩波文庫)

 感覚的な生活から全く遊離した、単なる「精神的」生活は、この世では恐るべきものである。それはともすると人の心に空虚感と他人に対する冷淡、酷薄の感情をうみ出す。そのような生活から、あの冷酷な宗教上の暴君たちや宗教的迫害の道具となった人たちが生れたのである。彼らは、個人的にはみじんも非の打ちどころはなかったが、あんなに多くの禍いをひき起した。

 私は幸いなことに、そのような人たちばかりでなく、一般に単に理論だけの哲学者や神学者たちにも、つねに嫌悪を持ちつづけてきた。このような学者は、人間にほとんど役立つことのない、しかも人の心をなだめることも向上させることもないような問題を好んで議論する。私は自分の生涯の終りに、多くの最も有名な学者たちの仕事の主要部分を形づくっている論議にかかわって、私の時間をつぶしたくないと思う。

ヒルティ著 草間平作・大和邦太郎訳『眠られぬ夜のために』第一部 岩波文庫